すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


吉野山(奈良県吉野町)

持統天皇をはじめ、歴代天皇の御幸の地としての吉野離宮、そして離宮をとりまく吉野川の風光明媚な景観。これが万葉時代の吉野のイメージであった。

中世には、山岳信仰と修験道から吉野山の冬の厳しさがクローズアップされ、吉野山といえば雪!となっていた。

ところが、平安時代末期に西行が登場し、桜をモチーフにした秀逸な歌を連発し、吉野のイメージを一気に桜に変えてしまった。

この吉野と桜の組合せは今に至るまで引き継がれ、現在、春の桜のシーズンには多くの観光客が吉野山に詰めかける一方、離宮跡の吉野川宮滝周辺には観光客の姿はなく、また冬の吉野山はまったくの閑散期となっている。



百人一首には吉野が歌枕の歌が二首。


み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣打つなり  参議雅経(百人一首)


なんか暗い感じの歌。
これを聞いて、あまり吉野へ行こうとは思わない。



朝ぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に ふれる白雪 坂上是則(百人一首)


夜明けのころ、有明の月かと見まがうほどに吉野の里に雪が降り積もっているよ、という歌意で、きれいな歌。









吉野に晩秋の紅葉シーズンに行ってきた。
下千本の駐車場に車を止めて尾根筋を歩いてのぼった。


そこそこの紅葉具合。
はるかに見えるのは、有名な龍門岳。



いい写真が撮れたなと、自賛してます。



上千本からの眺め。
現地では蔵王堂の屋根が見えていたが、写真では見えない。
桜シーズンは桜色に染まり、最高らしい。



蔵王堂入口。紅葉ってます。



蔵王堂。これはデカイ!




和紙屋さん。さすが和紙の里!



まんじゅう屋さん。草餅が有名。


紅葉シーズンであったけど、そこそこ混んでいた。桜シーズンには行ったことがないが、すごい人出と聞く。西行がこよなく愛した吉野の桜をいつか見に行ってみよう。






西行は本当に多くの吉野と桜の歌を残しているが、これなんかが最高であろう。


吉野山去年のしをりの道かへてまだ見ぬかたの花を尋ねむ 西行
吉野山で去年つけておいた道しるべの道ではなく、
まだ見たことのないところの桜を見に行こう
 


西行、もう一つ!

吉野山梢の花を見し日より心は身にも添はずなりにき 西行
吉野山の梢の花を見た日から、
私の心は私の体を離れてしまったよ。

ちなみに一般的な桜の種類である「ソメイヨシノ」は吉野の産ではなく、江戸で生み出されたものらしい。


 










お土産に買った草餅の名前は「花より団子」









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