すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
鳴子温泉、飯坂温泉と並んで、奥州三名湯と称される秋保温泉。 その歴史は古く、温泉の効能により欽明天皇(531年〜539年)の皮膚病を治した記録が残っている。名取郡にある温泉ということで、「名取の御湯」と呼ばれるようになった。 江戸時代には仙台藩伊達家の歴代藩主の巡覧があり、藩主が入浴する御殿湯が設けられた。 近世になり、仙台市内にほど近いことから「仙台の奥座敷」とも言われ、名勝松島と並ぶ仙台屈指の観光地となっている。 そして2016年、G7財務大臣中央銀行総裁会議がこの秋保温泉で開催された。 これら歴史が示す通り、秋保温泉は東北の温泉地の中でも別格の存在感がある。 さて、秋保温泉には、上記の欽明天皇のエピソードに因んだ歌がある。 皮膚病が治癒した欽明天皇は、お喜びから次の歌を詠んだ。 |
覚束な 雲の上まで 見てしかな 鳥のみゆけば 跡はかもなし | 欽明天皇 |
え〜と、名取郡の温泉という「名取の御湯」が歌の中に詠み込まれている。 2018年の夏、そんな由緒深い秋保温泉に行ってきた。 ![]() 秋保温泉の中心地あたりに湯神社がある。 ![]() 「名取御湯碑」があった。 ![]() 湯神社は、「ゆがみしゃ」と読むらしい。 ![]() 湯神社に続く敷地にあるのは「ホテル左勘」 中世以来の温泉の湯守であった佐藤家が先祖で、現在も秋保温泉の中心的なホテル。 G7財相会議もこのホテルで開催された。 ![]()
ホテル左勘の中に、秋保温泉の歴史のギャラリーがあるということを、自宅に帰ってから知った。 当時の再現や、仙台藩主伊達家との関係の貴重な資料の展示があるらしい。 今回行ったのは、地元の共同浴場 ![]() 午後三時過ぎに入ったが、7〜8名ほどの先客があり、多分平均年齢80歳ぐらいで、ほぼ地元の人たちらしく、互いに知合いのようであった。 ![]() こんな温泉に毎日浸かっていたら、さぞかし長生きできるだろう。 さて、大和物語にも「名取の御湯」関連の歌がある。 |
おほぞらの 雲のかよひ路 見てしがな 鳥のみゆけば 跡はかもなし | 常忠の妻(大和物語) |
しほがまの 浦にはあまや たへにけん などすなとりの 見ゆる時なき | 平兼盛(大和物語) |