すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
阿漕(あこぎ)(三重県津市)
伊勢の国阿漕が浦に引く網も度重なれば人もこそ知れ | 源平盛衰記 |
阿漕の逸話は本当に怖い。簀巻きにされて海に沈められるなんて想像するだに恐ろしい。 けれども、いかなる理由があれ、ルールを犯した者は法によって裁かれるわけで、それはそれで仕方のないものである。 ただし、おさまらないのが簀巻きにされた漁師の平治。 能の「阿漕」では、平治の亡霊が現れて、密漁の様子を見せる。地獄の業火に身を焼かれ、助けてほしいと懇願しながら再び海の底に消えていく。 いやはや何とも恐ろしい。 とりあえず【現地報告】 ![]() ここが阿漕が浦 昔、ここの沖合は禁漁地になっていた。 現在では津の日本鋼管の造船所が見える。 ![]() なんてことのない、ちょっとイマイチな海水浴場となっていた。 さらに、阿漕の街中には「阿漕塚」があった。 ![]() 小さな公園になっていた。 ![]() 「阿漕塚」 世の中では「阿漕の平治は欲深い」とされているが、 地元では「阿漕の平治は親孝行」とされて尊敬されている。 このため地元では阿漕塚を設けて、平治の霊を弔っている。 そして、芭蕉の巨大な句碑があった。 |
月の夜の何を阿古木に啼く千鳥 | 松尾芭蕉 |
その他、「密漁も度重なれば人々に知られてしまう」が転じて「(男女の)密会も度重なれば世間にバレてしまう」とされ、 |
逢ふことを阿漕の島に曳く網の度重ならば人も知りなむ | 古今和歌六帖 |