すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


有木山(岡山市北区)





歌枕としての有木山は二つの題材に依る。

@大嘗会の歌枕
もともとは天皇即位の大嘗祭に用いられる米を作る主基田として詠まれることが多かった。霊験あらたかな有木山として、京の都でも有名であった。


A藤原成親非業の地としての歌枕
大嘗会の寿ぎのイメージが一変するのが平安時代末期。鹿ケ谷での打倒平家の陰謀が露見し、配流されてきた成親が有木で殺害されて以降、成親の無念さを詠む歌が増えた。

藤原成親がそれほど素晴らしい人物だとは思わないが、平家物語では平清盛は大悪人とされていて、その清盛に無残に殺されたことから、成親は一躍不朽の忠臣にされてしまったようだ。

今回、平家物語の巻第二「新大納言の死去の事」を読み返してみた。兵庫大物の浦から児島に流された成親はその後に吉備の中山有木の別所に移され、最初は酒に毒を入れられたが死なず、ついに菱(先のとがった物)を並べた谷底に突き落とされ、菱に貫かれて殺されたとある。なんとも恐ろしい情景であるが、実際は食事を与えられず殺害されたらしい。




■歌の紹介


(大嘗会系)


祈ることしるし有木の山なれば 千とせの程もたのもしき哉 藤原経衡(大嘗会和歌集)
祈っておれば霊験あらたかなというこの有木山のことだから、大君の
治世の御安泰のほども思われて、何とも頼もしいことであるよ。
(おかやまの和歌/岡山県郷土文化財団) 


福田海本部の横の道沿いに歌碑



万代に有木の山の白椿 君が栄ゆく卯杖にぞ切る 橘盛永(庚申夜名所歌合)










(成親非業の死の関連歌)


有木山ありきとも君こそは 数えも知らめ松の千歳を 夫木和歌抄
有木山は現在現実にある山であっても、あなた(成親卿)こそは
千年の齢を保つ松のように、千載青史に名をとどめられることで
あろう。(おかやまの和歌/岡山県郷土文化財団) 


くちはてぬその名ばかりは有木にて 身ははかなくもなりちかの卿 平康頼(備中名所記)
その名は・・・ある/有木
身ははかなく・・・なる/なりちかの卿



あたらこの成親がごときよき臣を 有木の山のうもれ木にして 平賀元義
成親のような立派な忠臣をこんな辺鄙な有木山の埋もれ木に
してしまって!口惜しい。(おかやまの和歌/岡山県郷土文化財団)
 







え〜、現地を訪れましたが、麓から10分ぐらい坂を上ってきて、藤原成親遺跡まで300メートル(徒歩10分)の案内板まで着いて、なんか、蛇とか蜘蛛とか出てきそうなので、ここで引き返しました。

供養塔があるらしいのですが、諦めました。
訪問したのは真夏で、真夏の山道を歩くのは苦手です。
冬に再訪したいです。



















藤戸、水島と並ぶ岡山の平家物語ゆかりの地です。






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