すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


有の浦(広島県廿日市市)







「宮島八景」に『有浦客船』として選出されている有の浦。

厳島神社参詣の船着場として多くの船が停泊して賑やかだった様子が目に浮かぶ。

現在のフェリー桟橋から厳島神社へ続く海岸通りの海辺。







こんなかんじ






静かな海だった







平家物語でも有の浦は登場する。

高倉上皇は厳島参詣を盛大に催し、帰途に就いたが、折節波風が激しかったので船を漕ぎ戻し、有の浦に碇泊した。

高倉上皇は「厳島大明神のお名残惜しみに歌を歌おう」と仰せられた。すると、


立ち帰る名残もありの浦なれば 神もめぐみをかくるしら波 隆房の少将(平家物語)


波風が激しくて戻ってきた(=立ち返る)のは神々との名残が惜しかったことだとし、名残が『有る』と「有の浦」を掛けている。実に前向きな考え方だと思う。

「かへる」「なごり」「かくる」は白波の縁語。

(平家物語、巻第四、厳島御幸の事)







え〜と、同じく高倉上皇の厳島参詣の紀行文である「高倉院厳島御幸記」には、激しい波風で戻ってきたというエピソードはないが、隆房の少将によりこの歌が詠まれている。




隆房の少将は藤原隆房で、平清盛の娘婿。
『小督』の元恋人。
無理やりに小督と別れさせられた。
歌人としても有名。


隆房の詠んだ歌


「むげに恋しくて、いかにすべしともおぼえざりしかば」
あな恋し恋しや恋し恋しさにいかにやいかにいかにせむせむ 藤原隆房(隆房集)

















そして有の浦にあった二位殿灯籠

なんと、壇ノ浦に身を投げた二位殿のご遺体が有の浦にい漂着したという。









エピソードのある古跡が大好きです





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