すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


芦屋(兵庫県芦屋市)

高級住宅地の芦屋へ訪問した。
ただし失敗したのは、行きたいと思ってた場所をきちんと地図で特定せずに訪問したため現地で探しまくったこと、また市街地の芦屋を車で回るには無理があったこと、これら反省点を生かし、次回の芦屋訪問は下調べを十分に行ったうえで、歩いて回りたと思った。


JR芦屋駅前。車の中から撮影









芦屋といえば伊勢物語。
有名な87段では、芦屋から六甲の布引の滝を見に出掛けるという、貴族たちのレジャーの様子が語られている。


その中で、次の歌は「昔の歌」として紹介されている。

芦の屋のしほ焼きいとまなみ つげのをぐしもさゝずきにけり 伊勢物語
芦屋の灘に住んでる女は、塩焼きが忙しいため黄楊の小櫛もささずに来たよ


伊勢物語の主人公、「むかし男」こと在原業平は何かと芦屋に地縁があったようで、この87段では芦屋に住んでいる兄の在原行平のところに、業平が都から訪ねてきている。
また二人の兄弟の父は阿保親王といい、平城天皇の第一皇子で、芦屋に墓所があるとされる。

芦屋周辺に一族の領地があったのだろう。


その阿保親王の墓所へ行ってみた。


どうも写真の重なりがイマイチ。
ここは山のように大きかった。「親王塚」と呼ばれているらしいが、「塚」ではなく、「古墳」のスケールがあった。



阿保親王塚、正面。宮内庁が管理しているとのこと。

そのほかに、芦屋市には町名「親王塚町」「宮塚町」があり、「阿保山 親王寺」「阿保親王天満宮」という寺社があり、ケーキ屋の「親王館」もある。

また、在原業平関係では、「業平橋」が芦屋川の国道二号線に架かり、JR芦屋駅南には「業平町」がある。


じゃーん!業平橋。桜の咲き始めの時期だった。


業平橋の橋柱



芦屋川沿いに桜並木が続いている。


芦屋川沿いは「業平さくら通り」というらしい。









そして、この在原業平を題材として謡曲「雲林院」があるが、この中の芦屋に住む伊勢物語ファンの少年、芦屋公光(ワキ)にちなんだ「公光橋」や「公光町」もある。
今回は近くにまで行ったのに、見逃してしまった。残念。



謡曲でいくと、芦屋は「藤栄」の謡蹟でもあり、子方の月若にちなんだ「月若橋」や「月若町」も芦屋川が海に注ぐ辺りにある。
いつか行ってみたい。



謡蹟巡りになってしまったが、「鵺」で、淀川に流された鵺が大阪湾に出て芦屋の浜に漂着したとのことで、鵺塚があった。

芦屋公園の松林の中にあった。









さて、伊勢物語87段では、布引の滝を見物して戻ってくると日が暮れてしまい、海の方を見ると、漁火がたくさん見えたとのこと。

かのあるじの男、よむ

はるる夜の星か河辺のほたるかもわがすむ方にあまのたく火か 伊勢物語
雲のない夜の星か、川のホタルか、それとも私が住む辺りの海人のたく火かな


芦屋の浜から夕方の海を激写!!!
業平たち一行と同じ光景を見てる(?)




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芦屋市には「伊勢町」という地名があり、ややこしいが、これは職場の先輩によると、江戸時代に伊勢参りの仲間組織として伊勢講があり、彼らの共同所有の田んぼがあったことから名付けられたとのことで、伊勢物語とは全く関係ない。



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あと、谷崎潤一郎もはずせないが、どこに何があるのかわからない。






近いうちにもう一度、今度は徒歩で回ってみたい。




蘆の屋昆陽のわたりに日は暮ぬいづちゆくらむ駒にまかせて 後拾遺 
       





 









昔、芦屋に住む上司に二次会でタクシーで芦屋のラウンジに連れて
いかれて、最終電車で和泉市の自宅に帰った思い出があります。






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