すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


竹生(ちくぶ)(滋賀県長浜市)




学生時代に読んだ吉川英治の新・平家物語、全16巻。
この中で、全編を通して主要場面に登場する架空の人物、阿部麻鳥。
ある時は御所の水守、ある時は宮廷の音楽家、またある時は医薬師と職業を転々と変える。
また有名人との付き合いも幅広く、しかも浅くない。讃岐に流された崇徳上皇の配所に現れて笛を聞かせたり、文覚上人から医学の先生を紹介されたり、平清盛の最期を看取ったり、源義経の陣医となって西国を転戦したり、また奥さんの蓬も義経の母の常盤御前の童女であったり、それから麻鳥が人買いから助けた女の子がのちに祇王になったりと、とにかくいろんな場面に庶民代表として登場する。

実は、麻鳥のキャラクターは苦手で、物語の中で麻鳥が出現すると、しんどいものがあった。

そんな麻鳥は竹生島にも登場している。
木曽義仲を追討するために平維盛を大将として平家軍が北陸へ向かう途中に、平経正ら一行が竹生島に参詣した場面で麻鳥と出会う。経正は、清盛臨終の際にお世話になったとして麻鳥に琵琶を聴かせている。
経正といえば、幼少のころから仁和寺の覚法親王に琵琶の教えを受け、当世の琵琶の名手として名高かったのだが、その経正に直に琵琶を弾いてもらえるという栄誉に浴している。


架空の人物がどんな栄誉に浴していても関係のないことであるが、とにかく麻鳥は苦手キャラで、出てきたら興ざめしたような記憶がある。











現在の竹生島は島内の宝厳寺が西国三十三所札所巡りの三十番目にノミネートされ、多くの観光客を集めている。
2010年に妻と西国札所巡りを那智の青岸渡寺からスタートしたが、2016年12月現在、まだ八番札所の長谷寺で止まっている。
たぶん健康なうちに三十三所の結願ができることはないだろう。



今回は、北琵琶湖の旅に行ったときに、岸辺から竹生島を撮影したもの。
三十三所の巡礼は順番通りに行きたいと思ってるので、いきなり三十番に飛ぶことができない。そのため遠くから眺めることとした。


大崎(?)の半島から竹生島を撮影。現地ではもっと大きく見えたが、写真に撮るとこんな感じになった。






こんな竹生島を詠んだ歌


目に立てて誰か見ざらん竹生島 浪にうつろふ朱の玉垣 藤原隆祐

むかし夷服いふき岳(伊吹山)と浅井岳が高さを競ったとき、浅井岳が頭を斬られて、頭の部分が琵琶湖に落ちて竹生島ちくぶじまとなったといふ。浅井岳の浅井比売命は都久夫須麻つくふすま神社にまつられる。
(参考:雑学の世界/西国風土記



ちはやふる神に祈りのかなへばや しるくも色のあらはれにけり 平経正


竹生島には弁天様がまつられてゐる。源平の争乱のころ、平経正がここに参篭し、名器「仙童の琵琶」を借りて、弁天様の前で上弦石上の曲を夜通し奏でた。すると白龍(白狐ともいふ)に姿をかへた神が現はれたといふ。
(参考:雑学の世界/西国風土記














竹生島に行くのはいつのことになるのかな





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