すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


長楽寺(京都市東山区)




円山公園から続く坂道を上ったところにある長楽寺からは、眼下に洛中洛外の眺望が広がる。




都名所図会には、

それ当山は洛東第一の風景にて、鳳城九陌の大路小路、北は加茂・二葉山・大宮の森より南は鳩の峰・淀の川瀬をゆきかふ舟まで、眼中烏精の客とぞなる。
世に名高き勝地なり。

(東山長楽寺)





(現在の様子)







ロケーション的にも抜群の長楽寺は、古典文学にもしばしば登場するが、やはり一番有名なのは平家物語の建礼門院の出家の場面だろう。
壇ノ浦の戦いで生き残った建礼門院徳子は平家一門と安徳天皇の菩提を弔うために、長楽寺で出家した。お布施として安徳天皇の御衣を納めたとされる。

かくて女院は文治元年五月一日の日、御髪おろさせ給ひけり。御戒の師には長楽寺の阿証坊の上人印誓とぞ聞こえし。御布施には、先帝の御直衣なり。
〜 件の御衣をば幡に縫うて、長楽寺の仏前に懸けられるとぞ聞えし。
(平家物語、灌頂の巻、「女院御出家の事」)




今でも安徳天皇の御衣で作った仏幡が寺に伝わっているらしい。















【長楽寺関連の歌】



長楽寺にて、夜紅葉を思ふといふことを人々よみけるに

よもすがらをしげなく吹く嵐かなわざと時雨の染むる紅葉を 西行(山家集)





真葛原にそよそよと 秋の色ます華頂山 
時雨を厭う唐傘の 濡れて紅葉の長楽寺
頼山陽




円山公園一帯は、元々は真葛原という名勝地であったが、ここのキーワードは「時雨」「秋」そして「風」であった。
※「真葛原」のページを参照願いたい。





【長楽寺】











都名所図会「東山長楽寺」

(国際日本文化研究センター)











門前を素通りしました。






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