すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
大奥の「絵島生島事件」と聞いてもピンとこない。というか、全く知らなかった。 けれども、歴史好き、時代劇好きには堪らないテーマのようだ。 江戸城の大奥を巡る題材として何度もテレビドラマが作られている。 私は今回、信州巡りの旅を企画するなかで、初めて知った次第。 簡単に記すと、大奥の権力者であった絵島が、権力争いに敗れて、高遠藩に流され、死ぬまで幽閉されたということ。 現在、高遠城跡の近くに、幽閉された屋敷が再現され、絵島囲屋敷として観光スポットになっている。 ![]() 絵島囲い屋敷。高遠町歴史博物館に併設。 ■ 詳細についてはリンクを張っておこう Wikipedia「絵島」 蓮華寺(絵島の墓所) 長野伊那谷観光局「絵島囲い屋敷」 Wikipedia「大奥」 絵島の辞世 |
浮き世にはまた帰らめや武蔵野の 月の光の影もはづかし | 江島 |
大正年間になり、高遠を訪れていた田山花袋により、近くの蓮花寺にあった絵島の墓所が“発見”された。 これ以後、文学者が次々と当地を訪れるようになり、それぞれ歌を詠んだ。 |
えにしなれやもも年の後古寺の 中に見出でし小さきこの墓 | 田山花袋 |
あわれなる流されひとの手弱女は 媼となりてここに果てにし | 斎藤茂吉 |
物語まぼろしなりしわが絵島 墓よやかたよ今うつつの里 | 有島生馬 |
向ふ谷に陽かげるはやし この山に絵島は生きの心堪へにし | 今井邦子 |
歌碑もあり桜もありて絵島忌 | 吉屋信子 |
いにしへの流人の悲話をおもふ眼に 時雨すぎゆく高遠のやま | 木俣修 |