すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


吹上浜(和歌山市)





 秋風の吹上にたてる白菊は花かあらぬか波の寄するか  菅原道真(古今集)
秋風が吹く、吹上の浜に咲いた白菊は本当に花なのか、寄せる波がそう見えるのか


むかし和歌山の紀ノ川河口から南に伸びていた砂浜海岸。
風光明媚な地で、古来からよく知られた歌枕。
現在は和歌山城の南側に位置し高級住宅街となっている。

先頃、仕事で和歌山に行った際に乗ったバスが吹上付近を通ったので、写真を撮ってきた。


南海バスの車内



どうってことのない市街地の光景



これも



葬儀屋の名前は「 FUKIAGE HALL



フィットネスも「吹上」



向こうに和歌山城が見える





***




かの西行もここまで来ている。

西行が若い頃に出入りしていた待賢門院中納言の局メンバーたちが尼になって高野山の麓に庵を結んでいた。
西行が高野山から訪ねていったとき、みんなで粉河寺に行こうぜ!ということになり西行が案内することになった。女房たちは粉河寺だけでは満足せず、このまま吹上にも行ってみようということになった。
ところが吹上に着いた途端、大雨にあい、観光どころではなくなった。

ここで西行、

 天降る名を吹上の神ならば雲晴れ退きて光あらはせ
天から降りてきた吹上という名の神様よ、雲を追っ払ってください。


 苗代に堰き下されし天の川とむるも神の心なるべし
昔、能因法師が雨を降らせた歌があったが、今回は雨を止めてください神様
 
この二首を吹上の社に書き付けたところ、雨が止んだらしい。
このあと吹上と和歌の浦の観光を
「思ふやうに見て帰られにけり」(思う存分見て帰った)とある。(山家集)












紀伊国名所図会「吹上の神」 (国立国会図書館)

吹上に大雨が降っている様子
黒い僧衣は西行だろう






紀伊国名所図会「吹上の浜」 (国立国会図書館)

昔はこんな感じで砂浜が続いていたようだ











今は和歌山の高級住宅地になってます





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