すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


吹浦(山形県遊佐町)





あつみ山吹浦かけて夕涼み 松尾芭蕉(奥の細道)


月光川右岸の国道345号線沿いに句碑あり


句意は、「おりからの暑気に、その名も暑さと縁のある『あつみ山』。頭をめぐらせば、暑さを吹き払う涼しげな名の『吹浦』が見える。その『あつみ山』から『吹浦』にかけての眺望を一望に見わたしながら夕涼みをするとは、何としゃれたことだろう」(新訂おくのほそ道/角川文庫)



同行の曽良の日記によると、芭蕉たちは、酒田から象潟へ向かっていたが、朝から雨模様の天気で、吹浦に着く直前には激しい雨に見舞われたようで、昼時に吹浦に投宿している。

奥の細道の本文によると、
「山を越え、磯を伝ひ、いさご(砂浜)を踏みて、その際十里、日影やや傾くころ、潮風真砂を吹上げ、雨朦朧として鳥海の山隠る」
とあり、大変な行程であったようだ。
「蜑の笘屋に膝を入れて、雨の晴るるを待つ」
と、わずかに膝を入れるばかりの小さな漁師のあばら家に泊ったと記す。


う〜ん、もしもこの日に雨が降っていなかったら、吹浦はスルーされて、一路象潟へ向かっていたのだろう。







【吹浦】

2018年の夏、同じく雨の中を吹浦を訪問した。


この写真の右に小さく写っているのが、今回レンタカーで借りたWAGON-R。
雨の中を国道沿いに月光川の河口へ向かった。



北から南を写す。手前の川が月光川。その向こうが庄内砂丘。



出羽二見
伊勢の二見の夫婦岩のように、岩に注連縄が掛けられている。
インパクトが弱いのか、あまり観光地になっていないようだ。



吹浦から南方向。
芭蕉の句、「あつみ山や吹浦かけて夕涼み」はこの構図。晴れていたら『あつみ山』まで見えるのだろうか。



国道沿いに芭蕉の句碑があった。






明治時代になって正岡子規が当地を訪れている。

夕されは 吹く浦の沖の はてもなく 入日にむれて 白帆行くなり 正岡子規(はて知らずの記)














夏に芭蕉が訪れたこと、そして
涼しげな地名であったことが重なって、
吹浦にとって超ラッキー







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