すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


布留(ふる)(奈良県天理市)




いそのかみ〜 ふる〜


布留(ふる)」にはもれなく「石上(いそのかみ)」がついてくる不可分なコンビである。

このホームページを作るに当たっては、「石上」と「布留」は別々に作成し、「石上」は石上神宮を中心に構成し、「布留」は『布留山』『布留川』『布留野』『布留の高橋』などを採り上げる。





■布留山

当神宮の東方にある円錐形の山、標高266m。
古代には、当神宮の神奈備(かんなび)であったともいわれ、山中には岩石からなる磐座(いわくら)が現存しています。

(石上神宮ホームページ)







山辺の道から布留山を撮影。
たしかに言われてみれば、きれいな山容である。
けれども、まあ、何と言うか、一般的な山で、正直これといった特色のない山である。



布留山を詠んだ歌


未通女らが 袖布留山の 瑞垣の 久しき時ゆ 思ひき我れは 万葉集
少女が袖振るという布留の山野、神垣がずいぶん年を経ているように、
あなたを長い間、恋慕っておりましたよ、わたしは。
(訳:天理市のホームページ) 


石上神宮の大鳥居の傍らに歌碑






  ■布留川

古川、振川とも記されます。東方の龍王山(りゅうおうざん)を源として、西方の平野部に流れ、西流して初瀬川(はせがわ)と合流しています。
1級河川であり、上流には天理ダムが建設されています。

(石上神宮ホームページ)







草が茂りすぎて川なのか何なのか分からない。
けれども、たしかに清流であった。



布留川を詠んだ歌


吾妹児や我を忘らすな石上布留川の絶えむと思へや 万葉集
いとしいひとよ、わたしをお忘れにならないで。石上の、袖を振るという布留、
その布留の川が絶えないようにあなたへの気持ちは絶えません。
 
(訳:天理市のホームページ) 


天理市役所の北側の布留川横に歌碑







■布留の高橋

布留川が山間から平地へ抜け出たところ、石上神宮の裏手の辺りでは布留川は深い谷を刻んで流れている。
このため川に架ける橋は川面からはるかに高いところを跨いでいる。
古来そうであったらしく、今でもそうである。

高い橋なので「高橋」ということ。



現在の「布留の高橋」



橋の上から川を望む。かなり高い。



これも。川の真下。

「高橋」具合が分かるような写真を撮りたくて、いろいろ様子を見たが、地形的に無理であった。




こんな布留の高橋を詠んだ歌


石上 布留の高橋 高高に 妹が待つらむ 夜ぞふけにける 万葉集
石上の布留川にかかる布留の高橋 その高橋のように 高々と爪立つ思いで
あの女が待っているだろうに 夜はもうすっかり更けてしまった。
(訳:天理市のホームページ)
 


天理駅前に歌碑











■布留野

布留野は、「天理市石上辺りの古い地名」とある。
(写真なし)

布留野を詠んだ歌

春雨のふる野の若菜おひぬらしぬれぬれ摘まん籠(かたみ)手ぬきれ 西行
石上ふる野の道の草分けて 清水汲むには又もかへらん 紀貫之
朽ちにけり人もかよはぬ礒上 ふる野の沢に渡る丸橋 源顕仲







34.598651, 135.856281

(布留の高橋の場所)




手元には他にも色々と「布留」関係の歌がありますが、
これぐらいにしとこう。





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