すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
古市(三重県伊勢市)
「伊勢参り 大神宮にもちょっと寄り」 江戸時代、庶民の間にも伊勢参宮が大流行し、全国から伊勢を目指して参拝客が訪れた。 そして彼らは、伊勢神宮の参拝とともに、伊勢の歓楽街で大宴会をすることも大きな目的としていた。 外宮と内宮のあいだの古市という歓楽街は、江戸の吉原、京都の島原と並ぶ日本三大遊郭の一つであって、伊勢参宮ブームとともに遊興の地として殷賑を極めていた。 一般的には伊勢参拝の後の精進落としとして古市でエンジョイしたのだが、東海道中膝栗毛の弥次さん、北さんは参拝もしないうちに古市に遊びに行っている。 そして、こんな狂歌を詠んでいる。 |
むくつけき客もこよひはもてるなり名はふる市のおやまなれども | 東海道中膝栗毛 | |
(私訳)年をとってむさ苦しい客も今夜はモテるよ。地名は「古市」という歓楽地であるけれども。 |
弥次さんと北さんの古市でのエピソードは本当にケッサクなのだが、あまり詳しくここに書けないような内容だが、まあ簡記すると、 遊郭に上がった弥次さんは、何日もはき古したフンドシを見られたら恥ずかしいと思い、窓から外に汚いフンドシを投げ捨てたのだが、翌朝に庭の松の木にぶら下がっているフンドシをみんなに発見されてしまい、そこで「これはオレのふんどしではない、オレのフンドシは絹のフンドシだ」と強弁するも最後はバレてしまい、大恥をかくという内容。 そして、北さんが詠んだ。 |
ふんどしを忘れて帰る浅間岳 万金たまをふる市の町 | 東海道中膝栗毛 |