すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


布施(ふせ)(大阪府東大阪市)




すいません、

東大阪の布施がまさに「万葉ゆかりの地」だと言うわけでなく、たまたま布施駅の駅前広場にこの歌の歌碑があったので、関連付けたものです。 




河内女の手染めの糸を繰り返し片糸にあれど絶えむと思へや 万葉集
河内の女の手染めの糸を何度も繰り返したので、(二本でなく)片糸であるが
滅多に切れるようなことはない。

いやはや河内女の片恋の執念の歌である




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古代河内地方は帰化人が多く住みつき、染め織の技術を伝えた地であったらしく、とりわけ布施から八尾西部にかけて染物が盛んに行われていたようだ。
布施のちょうど2km南に「衣摺(きずり、衣に色を摺る)」の地名が残る。
中世には河内木綿として広く親しまれたようだ。 




さてさて、「河内の女」って、かの在原業平が竜田越えで毎夜通ってきたものの、その下賤な振舞いにより愛想を尽かされた「高安の女」のイメージと重なる。
現在でも「河内の女」と言えば、気品や奥ゆかしさとは対極の、陽気でにぎやかで、ちょっとくだけた感じのイメージになり、盆踊りで揃いの衣装を着て踊っているおばちゃん連中を想像してしまう。
そして男には情が厚く、かいがいしく世話をやくタイプの女性かな。

この歌も、片恋であるが深い情で思い詰める健気な女として「河内女」を詠んでいる。








【近鉄大阪線、布施駅前】


万葉歌碑は近鉄布施駅の南側のロータリー横にある。
じつに目立たない存在で、道行く人の大方はこの万葉歌碑の
存在を知らないのではないだろうか。

(横断歩道と植え込みとの微妙な場所にあります。私も一度見逃して通り過ぎてました)



歌碑の向こうに河内の女が自転車で走ってる。



いかにも布施っぽい風景である。



これも。
布施は色々な小説に登場する地名であるが、どれも殺人事件が起きたり、ケンカがあったりあまり良い感じでは登場しない。













東大阪の高安では、娘がいる家は東側に窓をつけるなとの言い伝えがあります。
かの在原業平が生駒山を越えてやってきて、娘が家の中で下品な振舞いをして
いるのを覗かれて、それで婚期が遅れる云々と。






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