すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


伏屋(ふせや)(長野県阿智村)





伏屋とは、
平安時代初期に最澄(伝教大師)が東山道の神坂峠のあまりにもの急峻さに驚き、旅人の便宜を図るために麓の園原に建てたと伝わる布施屋(ふせや)(旅の救護施設)。

布施屋自体は全国の街道に作られたのだが、この地の布施屋は信濃国の歌枕となり、園原や帚木(ははきぎ)木賊(とくさ)を組み込んで数多の歌が京の貴族たちに詠まれた。

布施屋の跡地には広拯院月見堂という文人たちの観月用の建物が建てられて現在に残っている。



これが広拯院月見堂。
文人たちがここから中秋の名月を観賞したとのこと。




訪問時は大雨が降っていた。




最澄との関係から、現在でも比叡山との関係が深く、布施屋跡地周辺に信濃比叡が建てられた。延暦寺根本中堂より分灯した「不滅の法灯」を本山同様に久しく燃え続けることを祈願している。




これが信濃比叡の参道入り口。門前屋という土産物屋になっている。










■伏屋を詠んだ歌

逢はざらんことをば知らで帚木伏屋と聞きてたづね来にけり 西行
おろかにも思はましかば東路の 伏屋といひし野べにねなまし 拾遺和歌集
ははき木おもて伏屋と思へばや 近づくままにかくれゆくらむ 源俊頼(続千載和歌集)
帚木はよそにさへこそみえわかぬ 霞む伏屋の春の曙 運慶法師
この本にきても見難き帚木伏せやと思ふなるべし 藤原定頼
夜もすがらあはれとぞ思ふ曽の原ひとり伏屋のとこなつの花 藤原道経
帚木のよそめばかりは道絶えて 一夜伏屋の名にも知られず 後柏原院
うからまし一夜伏屋の契りにて 曽の原とだに思ひ出でずば 宗良親王
忘れずよ一夜ふせ屋の月の影 なほ曽の原の旅心地して 宗良親王(新葉和歌集)
ありとてもあるかひもなき箒木伏屋にのみや年をへぬらむ 宗良親王(李花集)





伏屋と「伏せる」を掛けているのが目に付く
「面(おもて)伏屋」は顔を伏せていること。「一夜伏屋」や「一人伏屋」もそのまま。

















広拯院月見堂の敷地にこんな歌碑がありましたが、
どの歌なのか調べても分かりません。





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