すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


不退寺(奈良市)




伊勢物語フリークとして、ぜひとも訪問したい場所であった。

伊勢物語の第八十八段はとても短いのだが、



昔、いと若きにはあらぬこれかれ友だちどもあつまりて月を見て、それがなかに一人、

おほかたは月をもめでじこれぞこのつもれば人の老いとなるもの 在原業平


不退寺に歌碑


不退寺にあった解説
「私はたいていの人が言うように月の美しさを誉めたくない。(平安時代、世間の人は月を愛でなかった)それはこの月が積もり重なって、人は年をとってしまうからである。あんまり若くはない友人が数人集まって、お月見をしていた時、その中ひとり(業平朝臣)が読んだ晩年の歌」

・・・とある。不退寺とどう関係あるのかというと、ややこしい。

・不退寺は、阿保親王と在原業平の親子に創建時に大きく関わりがあり、その縁もあって、業平は晩年に不退寺で過ごしていた。

・時を経て、当寺に業平の肖像画が伝わり、その紙背には上記の和歌一首が書かれていた。

・しかもそれは寺伝では第57代陽成天皇の御震筆というので穏やかではない。

このような経緯から当寺に上記和歌の歌碑が建立されたもの。







もう一つ、業平の代表歌の歌碑があった。

ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれないに水くくるとは 百人一首







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不退寺は、奈良市の北部にあって市街地にも近い。
門前をJR奈良線が斜めに通過する。


223系快速電車



南門は鎌倉時代の建立で、重要文化財。



これが本堂。貴族の住居のような雰囲気である。



境内の庭園。非常に素晴らしいものであった。



池に架かる橋はやはり「業平橋」










あと、後世に在原業平を偲んで詠まれた歌が残っている。
序詞に「不退寺」と「業平」がある。




(序詞)不退寺にて人々六首の歌詠み侍りけるに、業平故事といへることを

苔の下に我が身ひとつは朽ちぬれど春や昔の名こそふりせぬ 良胤法師(楢葉和歌集)

















寺はそれなりに見応えあるものでしたが、
伊勢物語ファンでないと、楽しめない内容でした。






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