すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
中国地方の河川は一般的に中国山地を分水嶺として日本海と瀬戸内海に流れているのだが、この江の川は広島県北広島町の安佐山に源を発し、中国山地を貫流して島根県の江津市で日本海に注ぐという、すごい川である。 流路延長、流域面積も中国地方最大で、もちろん一級河川。 ただ、すごい川の割に知名度は低い。 誰も江の川のことを知らない。(私の周りの人々は) 九州最大の河川は筑後川で、たぶん多くの人々はその名称を知っているはず。とくに台風シーズンにテレビニュースで筑後川の名前をよく聞く。 近畿最大は淀川、中部は木曽川、関東は利根川、東北は北上川、北海道は石狩川、どれもみんな知っている有名な川。信濃川はどこやったかな? そんな中、江の川のマイナー具合はどうしたものだろう。 そんな江の川であるが、万葉時代に柿本人麻呂の妻が詠んだ歌に「石川」として詠み込まれている。 |
今日今日と我が待つ君は石川の峡に交りてありといはずやも | 依羅娘子(万葉集) |
直に逢はば逢ひかつましじ石川に雲立ち渡れ見つつ偲はむ | 依羅娘子(万葉集) |
夫の柿本人麻呂が死んだと聞いて、 「石川」については、この江津市の江の川と益田市の高津川が候補とされている。 柿本人麻呂が死んだ「鴨山」の場所が特定されたら、この「石川」も自ずと場所が特定されるのではないかと思う。 その柿本人麻呂の終焉の地である鴨山を半生かけて探し求めた斎藤茂吉。現地調査のため石見地方へ来訪した斎藤茂吉は江の川にこと寄せて「鴨山」への思いを詠んでいる。 |
あきらけき月の光が江川てらすを見つつ亡き友おもほゆ | 斎藤茂吉 |
雨おほき旅なりしかば江川水かさまさりて「亀」へ渡らず | 斎藤茂吉 |
江川濁り流るる岸にゐて上つ代のこと |
斎藤茂吉 |
斎藤茂吉の踏破旅行は6回にも及んだらしい。 ■江の川の写真 ![]() 江川橋 ![]() 河口方面 |
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