すさまじきもの 〜歌枕探訪〜



羽束師(はづかし)の森(京都市伏見区)






忘られて思ふなげきのしげるをや身をはづかしの森と言ふらん 後撰和歌集


インターネットの「教えて!goo」という質問サイトに、上の歌の修辞法についての質問があり、回答者が丁寧に回答している。
誰かも分からない人の質問に、全然知らない人が時間をかけて調べて回答するという、しかも無料!、そんな善意がまかり通るインターネットサイトが成り立つとは、本当に不思議である。


ベストアンサーに選ばれたのは、 shiremonoさん。


回答の内容をまとめると、
「なげき」は「投げ木」と「嘆き」の掛詞、「投げ木」は焚き火のこと
「はづかし」は「羽束師」と「恥づかし」の掛詞
「投げ木」と「繁る」と「羽束師の森」は縁語
そして shiremonoさんは次のように訳している。
『あなたから捨てられたことを思う悲しみが/焚き木にする木のように/ますます生い茂るので、この身を隠してしまいたくなる/はづかしの森という/のでしょう。』


いやはや素晴らしい!















羽束師の森は、古来からそこそこの歌枕の地であって、「恥ずかしい」に掛けて詠われてきた。

ネーミングが絶妙だったわけで、その森自体に兎角の評価があったわけではなさそうだ。




すてられておもう思いのしげるをや みをはづかしのもりというらん 菅原道真


家の風吹かぬものゆゑはづかしの もりのことの葉ちらし果つる 藤原顕輔


はづかしの杜のはつかに見しものをなど下草の繁き恋なる 凡河内躬恒






【現地訪問】


羽束師神社 ・・・ 京都市伏見区羽束師志水町219-1 


正式名は「羽束師坐高御産日神社」



割拝殿という形の拝殿。真ん中で割れている。



「羽束師の森」は羽束師神社の社叢のこと



神社裏手の森



これも


都名所図会「久世の里」(国際日本文化研究センター)

挿図の真ん中、社を囲む鎮守の森が「羽束師の森 」















ネーミングは大事だと本当に思います






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