すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


浜中(山形県酒田市)








罰がなければ、逃げるたのしみもない 安部公房/砂の女



学生時代に読んだ安部公房の「砂の女」。
日本文学史上屈指の名作との評判どおり、素晴らしい内容であった。


主人公の男は、砂丘の砂の穴に閉じ込められ、そこから逃げようとするが、地元民の監視が厳しく、どうしても逃げることができない。ところがそんな砂の穴での生活にも慣れてしまう。一緒に生活する地元民の寡婦の女ともうまくやっていくようになる。そんな時に、絶好の逃げるチャンスが到来するが、男はそのまま砂の穴の生活を続けることを選ぶ。


と、こんなストーリーである。この文章だけでは、どこが屈指の名作なのか分からないが。


さて、安部公房が「砂の女」の着想を得たのは、山形県酒田市にある浜中という部落の飛砂被害のグラビア写真だったという。浜中は日本海に面する荘内砂丘の真ん中にある。


現在では防風林が植えられ、砂丘を利用した果実栽培が盛んであるが、昔は日本海からの強い風が砂を飛ばして大変な生活を強いられていたようだ。


【浜中の航空写真】


本来は防風林があるようなところに浜中の町があって、日本海に面している。
そして周りは果実栽培のビニールハウスが広がっている。



まったく話が飛躍するが、2018年7月にNHKの「うまい!」という番組で、この荘内砂丘で作る「砂丘メロン」が紹介されていた。



翌8月に、現地訪問を予定していたので、とても興味深く見てしまった。砂丘はメロン栽培に適しているらしい。
番組内の料理コーナーの「メロンとヒラメの天ぷら」、いったいどんな味なのか。

(番組ホームページの写真)



話がいろいろ脱線しているが、え〜と、何の話だったかな?

そうそう、荘内砂丘訪問の前にもう一度「砂の女」を読んでみた。
感想として、学生時代のような感興はなく、「あーそうですか」って感じで、こっちも歳をとったな、と思った。









NHKの番組を見て、「砂の女」を再読して、満を持して荘内砂丘の浜中へ向かった。


ところが、



朝から大雨洪水警報が出ていて土砂降りの天気


浜中の集落から日本海に出たところにある「浜中あさり海水浴場」



真夏の訪問だったが、海水浴場は休みだった。



土管が砂に埋もれていた。



いやはや



写真を撮って、すぐに退散した。




江戸時代に庄内藩が、藩内の景勝地を集めて「大泉八景」を選定。浜中の砂丘も選ばれている。お題は「浜中落雁」


我影を友とや見つるはま中の真砂に下る雁の一行 大泉八景和歌


浜中におりゐる雁の玉づさハいく夜へだつる便(たより)なるらん 大泉八景和歌
(玉づさ・・・手紙)






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これはこれで満足感のある訪問でした




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