すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
金目川は、丹沢山系に源を発し、平塚市を貫流して相模湾に注ぐ二級河川であるが、下流の平塚大橋以南は花水川と呼ばれる。 「花水川」は花鳥風月のような風雅な名称であるが、元々の意味はまったく違う。 時は鎌倉時代、源頼朝がこの川の近隣の桜の名所である高麗山に花見に行ったが、前夜の嵐で花は散っており、花を『見ず』に帰ったことから「花見ず川」になり、それが転じて「花水川」となったらしい。 そのときの源頼朝と梶原景時の妻がやり取りした歌が伝わっている。 |
残りなく手折りて見ゆる桜かな又来ん春は何を眺めん | 源頼朝 |
出る息の入るをも待たぬ世なりけり又来ん春の頼まればこそ | 梶原景時妻 |
また来年見に来ようと慰め合ってる。 さて、道興准后は東国巡覧で花水川にやってきた。 季節は晩秋で、桜どころではなかった。 |
咲くとみえ散るとみゆるや風わたる花水川の浪のしらたま | 道興准后(廻国雑記) |
木枯らしで川波が立っていて、その白波が桜の散った花びらのようだと詠んでいる。 花水川が桜の名所だということを前提としているようだ。 ■現地訪問 実際の花水川はごく一般的な郊外タイプの河川だった。 ![]() 花水橋から北向きに撮影 冬に行ったので桜も見えず はるか遠くに見えるのは 手前左手の山は ![]() 花水橋の西詰の交差点 「大磯八景」には桜ではなく、夕陽の名所として選ばれている |
高麗山に入るかと見えし夕日影花水橋にはえて残れり | 大磯八景 |