すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


走井(はしりい)(滋賀県大津市)




走井は、山城国と近江国の国境、逢坂関にほど近い。
峠に続く街道に沿って、走井には茶屋や土産物店が並んでいたようだ。
ここでは清水が湧出し、旅人の喉を潤していた。

広重の東海道五十三次浮世絵の「大津宿」にも走井の茶屋が描かれている。いちばん左の茶屋が現在の月心寺。「走井の水」の井戸から清水が湧き上がっている。

湧き出た水が走るように溢れたことから「走井」となったらしい。





近江路の観光旅行に行く際に、寄ってみた。

今にも残る、走井の月心寺。



元の茶店が寺になっていた。
ただし、内部には素晴らしい庭園があり、食事もできるそうだ。



内部は解放されていなかったので、塀の外から撮影。
池が巡らされ、相当な広さらしいが、これだけではよくわからない。



「走井の水」の井戸が奥に見える。



街道は現在では国道1号線になっていて、車の往来が激しい。
その左には京阪電鉄と名神高速道が走る。
いつの世でも、ここは交通の要衝である。







走井を詠んだ歌は多い。


走り井のほどを知らばや相坂の関引き越ゆる夕かげの駒 清原元輔(拾遺和歌集)



走井のかけひの霧はたなびけど 長閑に見ゆる望月の駒 藤原俊成



逢坂の関とは聞けど走り井の水をばえこそとどめざりけれ 藤原基経(後拾遺和歌集)

清水が走るように勢いよく湧き出ていて旅人ののどを潤した






枕草子にも登場する

井は、ほりかねの井、玉の井、はしり井は逢坂なるが をかしきなり





 





峠の茶屋の名物は「走井餅」。
いまでも売られているらしい。


「走り井餅本家」へリンク


京阪電鉄大谷駅近くに「元祖走井餅本店」の石碑があった。





真清水の走井もちを二つ食べ 高浜虚子











今回は、走井餅を食べられなかった。
次回は是非ともお土産としてGETしたい。




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