すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
発心門王子(和歌山県田辺市)
え〜と、2009年8月に大阪の天満橋から熊野古道を歩き始め、19回、220キロを歩き、2013年11月にようやく中辺路の小広王子にたどり着いた。目的地の本宮大社まで残り1行程となったのだが、ここで古道歩きはストップしている。それは、多分、小広王子から三つの峠を越えるルートの厳しさに怯んだことによる。なんというか、藤白神社から二つの峠を越えるルートも大変だったけど、峠を三つも越えるなんて、ちょっと無理!、という感じ。そのうちに自分自身の興味も旧東海道踏破に移ってしまい、2018年1月、愛知県の豊橋まで進んでいる。 そんな中、個人的に南紀方面に温泉旅行に行くことがあり、せっかくなので藤原定家の歌碑がある発心門王子を訪問した。もちろん車で。 ところが、やっぱり熊野古道を車で回るのはいささか罪悪感を感じるものがあり、王子の社殿の写真を撮ると、すぐさま車に乗って帰ってしまった。 こんなかんじ ![]() 発信門王子は熊野参詣の九十九王子のなかで特に重要な五大王子だったらしい。人々はここにあった大鳥居をくぐって熊野本宮に向かったとのこと。往時はそれなりに大きな王子で、藤原定家もここで宿泊している。 ![]() 現在では、小さな社殿があるだけだった。 たしかに、熊野古道の五体王子とされた王子のなかでは、断トツに小じんまりとしていた。現在では紀伊田辺行きのバスの出発点でもあり、茶店の一つでもあってもよさそうであるが、なにもなかった。 こんな発心門王子で詠まれた歌 |
いりがたきみのりの門はけふ過ぎぬ今より六の道に帰すな | 藤原定家 |
嬉しくも神の誓ひを知るへにて 心おこす門に入ぬる | 権中納言経房(千載和歌集) |
どちらも、発心門という鳥居を越えて、これから神域に入っていくという意味になる。![]() 熊野参詣道は世界遺産に登録されている。 |