すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


泊瀬(奈良県桜井市)







ビッグネームの歌枕、泊瀬(はつせ)。
泊瀬の枕詞は「こもりく(隠国)」で、三方を山に囲まれた峡谷の行き止まりの地形のこと。
上の地図(地形図)では、初瀬街道(国道165号/赤色)から北東に入った道(36号線/黄色)は、峡谷に沿って北へ向きを変える。
このような「こもりく」の地形は死者の霊がとどまる場所とされ、古代日本の信仰上の重要な要素であったようだ。そして平安時代に至り長谷寺の観音信仰、現在の西国三十三所巡りにつながっていく。






■泊瀬を詠んだ万葉歌


こもりくの泊瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ 万葉集



こもりくの泊瀬の山に霞立ちたなびく雲は妹にかあらむ 万葉集



こもりくの泊瀬の山は色づきぬしぐれの雨は降りにけらしも 大伴坂上郎女(万葉集)


長谷寺境内に歌碑




こもりくの泊瀬の山に照る月はみちかけすてふ人の常なき 万葉集


長谷寺境内に歌碑




こもりくの杉の緑はかわらねど泊瀬の山は色づきにけり 万葉集



泊瀬の 斎槻が下に 我が隠せる妻 あかねさし 照れる月夜に 人見てむかも 万葉集





感想として、葬送の地であった泊瀬を詠んだ歌や、四季の自然を詠んだ歌が多い中、最後の「泊瀬の 斎槻が下に〜」は『隠り妻』の歌らしいが、よく分からない。













2010年8月に、妻と西国三十三か所巡りをスタートして、2016年4月にようやく八番目の長谷寺を訪問。
多分、生きているうちに巡礼は終わらないだろう。



【長谷寺】 ・・・ 奈良県桜井市初瀬731-1

訪問したのは4月下旬。

重要文化財の仁王門の保存修理工事の最中であった。
全く興味がないのでスルー。



名物の登廊、三九九段あるらしい。



この日は三輪山の大神神社から初瀬街道を歩いて長谷寺までやってきた。初瀬川の川筋をさかのぼる経路であり、なだらかな坂道をひたすら上ってきた末にこの階段だったので、妻は機嫌が悪く、大変であった。



これが登廊。



長谷寺は牡丹の花で有名。ちょうど見頃であった。



花にはあまり興味がないのだが、たしかにきれいであった。



本堂を横から見た図。



そしてこれが本堂からの眺望。
谷筋が右手に屈曲しているのが見える(かな?)。
個人的には素晴らしい眺めだと思う。
(冬の方が分かりやすいかも)




ジャーン!
これが紀貫之の「故里の梅」!
なんだかよく分からないが、素晴らしい!



百人一首の秀歌である。


人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 紀貫之(百人一首)






そして百人一首には泊瀬を詠んだ歌がもう一つ収録されている。有名でないが。

うかりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを 源俊頼朝臣(百人一首)






★★★  その他、境内にあった句碑  ★★★






「此裡に春をむかへて」
我もけさ清僧の部也梅の花 小林一茶


長谷寺境内に歌碑




春の夜や籠り人床し堂のすみ 松尾芭蕉


長谷寺境内に歌碑







いろいろと書いてきたが、まだ書いていないエピソードとして源氏物語の玉鬘のことと、有名な「二本の杉」がある。
これらはまとめて「二本の杉」のページとして改めて作りたい。







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お土産は名物の「くさ餅」でした。






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