すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


引手の山(奈良県天理市)





日本最古の道、「山辺の道」。
山辺の道の東に横たわる山々の中で、ひときわ高く聳えたっているのが「竜王山(585.5メートル)」。万葉集では「引手の山」として詠まれている。
秀麗な山容であるし、目立つ存在だと思うのだが、なぜかしら和歌としてほとんど残っていない。
理由は簡単に想像できる。近くにビッグネームが揃いすぎているからだろう。山だけでも「三輪山(三諸山)」「巻向山(弓月が岳)」{(袖)布留山」など本当に魅力的な山が前後に連なっている中で、存在感をアピールできなかったのだろう。


どんな山なのかというと、

こんなかんじ


ビニールハウスと「引手の山」
とりあえず周辺では一番標高が高い山


これなんか、ベストショットの写真だと思う
柿畑越しの「引手の山」


これもいい感じで撮れている写真


こんな素晴らしい山であるが、この「引手の山」を詠んだ歌で、現在手元にあるのは次の歌のみ。


衾道引手の山に妹を置きて 山路を行けば生けりともなし 柿本人麻呂(万葉集)
引手の山に、いとしい人を残して置いて山路を帰ってくると、
生きている元気もない。(大和万葉旅行)
 


山辺の道沿いに歌碑
(衾田稜近く)


柿本人麻呂が、死んだ妻の遺骸を引手の山の麓に葬って帰ってきた際に詠んだ悲歌。
今でもこの辺りにはたくさんの古墳があるが、古代から死者を葬る場所だったのだろう。















引手の山は素晴らしい形の山でした。
この山が違う地方にあったら、おそらく
スター級の扱いを受けていたでしょう。

世の中の縮図のような山でした。





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