すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


斐伊(ひい)(島根県雲南市)









斐伊川は、奥出雲町の船通山を源とし、雲南市、出雲市を流れて宍道湖に流入、中海・境水道を経て日本海に注ぐ。
流域面積約2,550平方km、長さ153kmの一級河川。

神話の世界では、船通山の麓に八岐大蛇(やまたのおろち)が棲みつき、人々を苦しめていたが、「()の川上(斐伊川上流という意味)」へ天上からスサノオノミコトが降り立ち、八岐大蛇を退治した。

なお下流部は、もともと出雲平野に出てから西へ流れていたが、江戸時代に現在のように東に流れるよう川違(かわたがえ)が行われた。

斐伊川は、風化しやすい花崗岩質の山地を流れるため土砂が川へ流れ込み、川床を押し上げるため、よく洪水の起こる川であった。江戸時代には「たたら製鉄」の砂鉄採取のため大量の土砂を流す「カンナ流し」が行われ、下流部は天井川となった。

このため、洪水時に斐伊川の水流の一部を分流し、出雲平野を西へ流す斐伊川放水路を建設し、2013年に完成した。



いやはや、いろいろと興味深い川である。








斐伊川の写真


■ 下流部


中国山地から出雲平野へ出てきたところ



これは本流、宍道湖へ流れる



斐伊川放水路を見学



本流側から撮影
平常時は、ゲートは閉められている



放水路側
洪水時には、ゲートの向こう側から水が流れ込む



放水路の下流方面
一段と深く掘ったところで土砂を溜める(沈砂池)






■ 中流部


肌色の土砂は花崗岩由来のものだろう



河畔にある小さな丘は草枕山
酔った八岐大蛇がこの丘を枕にして寝たという



松江自動車道の斐伊川橋が見える





■ 上流部分


さくらおろち湖と尾原ダム







こんな斐伊川を詠んだ歌


出雲川底の水屑(みくづ)の数さへに 見えこそ渡れ夜半の月影 中務(夫木和歌抄)
下流部を出雲川と言った


簸川(ひのかわ)や春立浪にさく花の千代の栄えは君によすらん 善水(出雲国名所歌集)


肥川の水のうたかたかつ消えて かつあらはれぬ人のかなしさ 小泉真種(出雲国名所歌集)


待ちいづる()の川上の山桜 いつもしかくや花の八重くも 正徹


ひの川や水上遠くたづぬれば ながれのおとも神さびにけり 堀尾光久(出雲国名所歌集)


大御田(おほみた)()の川水をせき分けて 神の恵のたえぬなはしろ 新田家貞(出雲国名所歌集)
















たたら製鉄にとても興味があります






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