すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


領布(ひれ)振の嶺(佐賀県唐津市))





古代の伝説、「松浦佐用姫(さよひめ)」ゆかりの地。
WIKIPEDIAから引用する。
【松浦佐用姫】
537年、新羅に出征するためこの地を訪れた大伴狭手彦と佐用姫は恋仲となったが、ついに出征のため別れる日が訪れた。佐用姫は鏡山の頂上から領巾(ひれ)を振りながら舟を見送っていたが、別離に耐えられなくなり舟を追って呼子まで行き、加部島で七日七晩泣きはらした末に石になってしまった



佐賀県唐津市の鏡山は、佐用姫が領巾を振って舟を見送った伝説から「領布振の嶺」と呼ばれた。

これが「領布振の嶺」(鏡山)。
この山の頂上で領巾を振った。



現在、頂上は公園や展望台が整備され、観光地になっている。


案内図



そしてこれが頂上からの眺め。
ここから大伴狭手彦が乗った舟に向かって領巾を振った。



位置的にはこんな感じ。
写真の下の方に「鏡山展望台」
虹ノ松原が眼下にある。



佐用姫像があった。こんな感じで領巾を振ったのだろう。



これが展望台。



頂上の公園にあった売店の名前は「さよひめ茶屋」



山の頂上なのに立派な池があった。蛇池というらしい。



お約束、「神功皇后史蹟」碑。
神功皇后が山頂に鏡を祀ったことから鏡山となったらしい。







領巾振り伝説を詠んだ歌



海原の沖行く船を帰れとか 領巾振らしけむ松浦佐用姫 万葉集
海原の沖を行く舟よ帰れとて領巾を振ったのだろうか松浦佐用姫は
(現地の案内板より)
 


虹の松原万葉の里公園に歌碑




行く船を振り留みかねいかばかり 恋しくありけむ松浦佐用姫 万葉集


鏡山山頂展望台近くに歌碑




松浦潟佐用姫の子が領巾振りし 山の名のみや聞きつつ居らむ 万葉集


鏡山山頂公園に歌碑




遠つ人松浦佐用姫夫恋ひに 領巾振りしより負へるの名 万葉集


山の名と言ひ継げとかも佐用姫が この山の上領巾を振りけむ 万葉集


万代に語り継げとしこの領巾振りけらし松浦佐用姫 万葉集


音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫領巾振りきとふ君松浦山 万葉集




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つれもなき君まつら山まちわびて領巾ふるばかり恋ふと知らずや 教長集


蝉の羽の衣に秋を松浦潟領巾ふる山の暮ぞ涼しき 拾遺愚草


後世の歌は、「松浦」と「待つ」を掛けている。






領巾振山
緑なす山の頂
しろたへの領巾ふる少女
ひらひらと空になびかひ
ひるがへる領巾こそ見ゆれ
平野萬里
明治大正の詩人


鏡山神社に詩碑







うき草の茎の長さや山の池 高浜虚子


蛇池の畔に句碑

これは頂上の蛇池を詠んだ句















さて、大伴狭手彦を見送った佐用姫は、悲しみから七日七晩泣きはらした末に石になってしまう。
現地では、ちゃんと佐用姫岩として史跡になっていた。


これが佐用姫岩



傍らにある橋の名は「佐用姫橋」



「佐用姫岩」と、左後方に「領巾振の嶺」
















万葉集が詠まれたころに、既に伝説だったとは、相当古いことなのだろう。






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