すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


広沢池(京都市右京区)




〜興味のない人はスルーしてください〜


NHK、朝の連続テレビ小説「あさが来た」が放映されたのは2015年の下半期のこと。主人公のあさは京都の豪商、今井家の次女。お転婆な子供時代からスタートし、激動の時代を乗り越えて実業家、教育者になっていく人生をたどる物語。
五代様とかが出てきて結構楽しかった。

そんなドラマの中で、遊び人の新次郎は、あさとの婚礼の日をすっかり忘れて朝から紅葉狩りに出かけて行った。池のほとりで三味線に興じていたところを番頭に呼び戻されて急いで帰るのだが、この場面のロケ地は広沢の池である。




【広沢池】






広沢の池の北側にある三角形のきれいな山は遍照寺山。


都名所図会「廣澤池」(国際日本文化研究センター)

上の写真と同じような挿図。




近くの大覚寺の大沢の池と同じく、広沢の池も観月の名所である。
広沢の池は、平家物語にも月見の名所として一瞬だが登場する。
やうやう秋もなかばになりゆけば、福原の新都にまします人々、名所の月を見んとて、或は源氏の大将の昔の跡をしのびつゝ、須磨より明石の浦づたひ、淡路の瀬戸をおし渡り、絵島が磯の月を見る。或は白良吹上和歌の浦住吉難波高砂尾上の月をあけぼのにながめてかへる人もあり。旧都に残る人々は伏見広沢の月を見る。
『平家物語』「月見」
平清盛は福原への遷都を強行する。
秋になって、福原にいる人々は月見をするために、光源氏のように須磨から明石へ渡ったり、淡路島で月を見たり、あるいは和歌山から兵庫県の観月の名所に足を延ばした。
一方、京都に残った人たちは、伏見や広沢の池で月を見た


こんな感じで、昔から広沢の池は相当な観月名所だったようだ。




広沢の池の月を詠んだ歌

更科明石もここにさそひきての光は広沢の池 慈円

なべて世には見るとも広沢の清き流れを誰か伝へん 寂蓮

宿しもつの光のををしさはいかにいへども広沢の池 西行

広沢の池に宿れる影や昔をてらす鏡なるらむ 後鳥羽法皇

あれにける宿とてはかわらねど昔の影はなほぞこひしき 平忠度

いにしへの人は汀(みぎは)に影たえてのみすめる広沢の池 源頼政

散る花にみぎはのほかの影そひて春しも広沢の池 藤原定家

すむ人もなき山里の秋の夜はの光もさびしかりけり 藤原範永

ながめするの桂のあとまでもひとつに澄める広沢の池 藤原為家

水涸れて 池のひづみや 後の 与謝蕪村

や 池をめぐりて 夜もすがら 松尾芭蕉










【遍照寺】


広沢の池の南に遍照寺がある。
もとは広沢の池の池畔にあったが、いつしか荒廃し、江戸時代に場所を移して再興された。
山号は広沢山











レンタサイクルの返却時間が迫っていましたので、
大急ぎで写真を撮って退散しました。。






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