すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
広瀬(奈良県河合町)
地図を眺めると本当に興味深い地形である。 南北から川が集まってきて大和川に注いでいる。 西流する大和川に対し、右岸は東から佐保川、岡崎川、富雄川が流れ込み、左岸からは寺川、明日香川、曽我川が流入する。その曽我川には直前に高田川や葛城川が合流している。 ここの町名は「河合町」で、川が合流する意味。 そして「広瀬」は川幅が広いという意味。 古代、奈良盆地の水運が盛んであった頃、広瀬の地はいろんな河川が出会う地として交通の要衝になっていた。 この付近は、現在でも地味が悪く、昔からの自然堤防上の集落を除き、ほとんど開発されていない。 しかも南から北流する河川は天井川になっており、地球温暖化が進む中で今後も甚大な自然災害が起こる可能性が大きい地域であろう。 堅い話はぬきにして、広瀬を詠んだ歌の紹介 |
広瀬川 袖つくばかり浅きをや 心深めて我が思へらむ | 万葉集 | |
広瀬川は徒渉するほど浅い。そのように浅いあの人の心だものを、 自分の心の底まで、なぜこんなに思い込んでいるのであろう。 (大和万葉旅行/堀内民一著) |
ひろせ河わたりの沖のみをつくしみかさそふらし五月雨のころ | 山家集 |