すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
筆捨山(三重県亀山市)
東海道名所図会 「筆捨山」![]() (早稲田大学図書館) 絵図の手前に茶店があり、そこから東海道の旅人が筆捨山を眺めている様子が描かれている。 筆捨山とは、東海道の名勝で、山肌の奇岩と屈曲した古松が殊に美しく、鈴鹿越えの際にはここで休憩して、その景色を楽しんだらしい。 言い伝えによると、 狩野古法眼(狩野元信)が、東国に向かう向かう時にこの山の風景を絵にしようとして筆をとったが、思うような絵が描けず、ついに山間に筆を捨ててしまった、 こんなことが地元に伝わり、筆捨山という名前がついたとのこと。 東海道名所図会には 「麓に八十瀬川(鈴鹿川のこと)を帯びて、蒼松の黛(まゆずみ)色濃やかにして、奇岩所々にならびて、松根これがために曲がり撓められて作り樹のごとし」 とある。 絵図の中に書かれているのは、 |
狩野家さえ 筆を捨てたる 所をば 拾ふて図する 無法眼なり | 春泉(東海道名所図会) |
そんな筆捨山の現在の姿 ![]() 民家越しの筆捨山 ![]() 駐車場越しの筆捨山 ![]() 国道越しの筆捨山 ![]() 塀越しの筆捨山 ![]() 結論から言うと、 ・茶店はなく、 ・筆捨山には松がなく、 ・杉に覆われて、奇岩の露出も少なかった しかもこれだけの名所なのに、展望する場所もなく、案内板さえなかった。もちろん見物の観光客もおらず、限界集落のような町に住民の姿もなく、そのかわり国道一号線の車の往来だけは激しかった。 ![]() (WIKIPEDIA) これは広重の東海道五十三次の浮世絵。 旅人が茶店で休憩しながら風景を楽しんでいる様子。 |