すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


飯塚(福岡県飯塚市)





NHKの朝ドラを、職場の昼休みに見ている。
1996年の「ひまわり」以来なので、これまで何作見たことだろうか。
傑作もあれば駄作もあった。
個人的に大好きなのは「ちりとてちん」と「あまちゃん」。そして「どんと晴れ」「ふたりっ子」もよかった。
イマイチだったのは「純と愛」と「半分、青い」。
人気のある作品の時は職場の休憩室のテレビの前に人が集まり、最終回に向けて盛り上がっていく。逆に人気のない作品の時は、一人抜け、二人抜け、閑古鳥が鳴くようになる。「半分、青い」は最後は二人だけになった。本当に苦しい作品であった。




2014年の上半期は「花子とアン」。
「赤毛のアン」の日本語翻訳者である村岡花子の半生を原案としたフィクション。
ただ、主人公の花子(吉高由里子)も、花子の夫(鈴木亮平)も、花子の父(伊原剛志)も苦手キャラだったので、しんどい半年間であった。
主人公の寄宿舎生活で知り合ったのが葉山蓮子。葉山伯爵の異母妹という設定で、主人公とは腹心の友となる。政略結婚で九州の炭坑王のもとに嫁ぐことになるのだが、この葉山蓮子は歌人の柳原白蓮がモデルである。




柳原白蓮は1885年生まれ。柳川前光伯爵の次女。大正天皇の従妹である。
25歳年上の伊藤伝右衛門と再婚して福岡県飯塚に移り住む。
伝右衛門は炭坑従事者から成りあがりの事業家で、学問もなく、二人の間は初めから冷めた関係であったようだ。しかし伝右衛門は白蓮のために豪華な別邸を建てたり、歌集を出版させたりと、なにかと気を使っている。
結婚生活はなんとか10年間続いたが。最後、白蓮事件を起こして白蓮は東京に去っていく。




白蓮の歌


化粧(けわい)五月となれば京紅(きょうべに)の 青き光もなつかしきかな 柳原白蓮
誰か似る鳴けようたへとあやさるる 緋房(ひぶさ)の籠の美しき鳥 柳原白蓮
年経ては吾も名もなき墓とならむ 筑紫のはての松の木かげに 柳原白蓮
旅にきて秋のそよ風身には沁む 筑紫はわれに悲しきところ 柳原白蓮
思ひきや月も流転のかげぞかし わがこしかたに何をなげかむ 柳原白蓮


どれも悲調感があふれていて、飯塚での白蓮の生活の様子がよく分かる。






さて、そんな飯塚を訪ねてみた。



観光案内図を見たが、旧伊藤伝右衛門邸とボタ山以外にこれといった観光地はなさそうだ。



旧伊藤伝右衛門邸



ボタ山。WIKIPEDIAの写真を借用。



遠賀川
この写真の右手に白蓮の歌碑がある。
飯塚市から福岡市へ抜ける八木峠を詠んだ歌。

師の君の来ますむかふと八木山の峠の若葉さみどりのして 柳原白蓮



東京からの訪客を迎えに博多駅へ向かう途中、八木峠で高ぶる気持ちを詠んだ歌。














太宰府天満宮の参道に伊藤伝右衛門が奉納した鳥居があります。













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