すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


いかが崎(滋賀県大津市)











蜻蛉日記の石山詣の条、
いかが崎山吹の崎などいふところどころ見やりて、葦の中より漕ぎゆく」

夫、道兼の夜離れが久しくなった藤原道綱母は石山詣でを思い立つ。10日間の参籠が終わり、石山寺からの帰途に瀬田川を舟で漕ぎ出した。

いかが崎、山吹の崎について、石山寺の近くの瀬田川の畔であるとされているが、場所の特定はなされていない。蜻蛉日記では、石山寺と瀬田橋の間にあったように記述されている。

和歌の歌枕地名大辞典によると、いかが崎は「滋賀県大津市石山寺の東北の瀬田川の突き出たところの名」とあり、山吹の崎は「石山寺と瀬田の橋の間にあった地名」とのことで、だいたい同じような場所のようだ。

ただし蜻蛉日記には、いかが崎と山吹の崎のは並べて記述されているので、当時両者は近くにあるものの別の歌枕として認識されていたもの。

「崎」のつく地名なので、山が突き出た地形であるはずだが、見当たらない。

川の流れも変わった。瀬田川は、今は河道が安定しているが、昔は芦が繁る中を小舟が行き来するような川だったようだ。


結局よく分らないまま訪問。広い範囲で写真を撮ってきた。









@瀬田川左岸から南向き



A瀬田川左岸の正面



B瀬田川左岸から北西方向



近代になって下流に南郷洗堰ができて、水が堰き止められた。
学生のボート部が熱心に練習していた。











【いかが崎】


かぢにあたる波の雫を春なればいかがさき散る花と見ざらむ 兼覧王(古今和歌集)


我はただ風にのみこそまかせたれいかがさきには人の行くらむ 和泉式部続集


草わかみ常陸の海のいかゞ崎いかであひみむ田子の浦浪 源氏物語「常夏」

近江の君の弘徽殿女御への贈歌。この挿話は本当に面白い。







【山吹の崎】


風吹けば波の花さへ色見えて こや名に立てる山吹の崎 中宮方の女房(源氏物語「胡蝶」)


近衛院御時大嘗会和歌
言はねども梔子(くちなし)色に(しる)きかなこや音に聞く山吹の崎 顕輔集







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いかが崎は大阪府枚方市の淀川沿岸という説もあります







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