すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


生田(神戸市中央区)




神話時代の神功皇后が創建したという生田神社。
現在は、神戸の繁華街の真ん中にあり、参拝客が絶えない。

先頃、神戸市の湊川神社で用事があり、そのついでに寄ってきた。
ただし、知人との同行だったので、いろいろ見たいところは多かったが、広い境内をあまねく探し回ることが憚れる雰囲気だったので、きちんと訪問できていない。
「箙の梅」「敦盛の萩」など、一級の「ゆかりの地」を逃したのは痛い。




こんなかんじ

ちょうど結婚式があった。
以前にお笑い芸人と女優のカップルがここで結婚式を挙げたことから「恋人たちの聖地」になっている(現在は離婚済)。













【生田の森】
本殿の裏にある鎮守の森が、古来「生田の森」として、都にも知られる歌枕の地であった。


こんなかんじ



入口。周遊の遊歩道が作られていた。

古来「生田の森」を歌枕として幾多の歌が詠まれている。


秋とだに吹きあへぬ風に色かはる生田の森の露の下草 藤原定家
いきもどれ見てもしのばん夕されば生田のもりに木の葉散るなり 源俊頼
君住まば訪はましものを津の国の生田の森の秋の初風 詞花集


 




次は【生田の池】
少し歩くと、神社に有りがちな、いつもながらの「神社の池」が登場。

それまで知らなかったが、「森」に続いて「池」も由緒があるらしい。
古歌が数首残されている。


人住まばさらにや問はむ津の国の生田の池の秋の月影 順徳院
しぐれ行く生田もりのこがらしにのみくさも色かはる頃 藤原定家






【箙の梅】
いや〜、平家物語フリークや能楽マニアにはたまらない!


訪問せず。というか、見つけられず。
生田神社のホームページから写真を拝借。

 謡曲「箙」は、梶原景季が箙に梅をさして奮戦した様を描いた勝修羅物である。
源平盛衰記には、源平一の谷合戦の時、梶原景時、景季父子は生田森で平家方の多勢に囲まれて奮戦した時の様子を『中にも景季は、心の剛も人に勝り、数寄にたる道も優なりけり。咲き乱れたる梅が枝を箙(矢をさし入れて背中に負う武具)に副へてぞ挿したりける。かかれば花は散りけれども匂いは袖にぞ残るらん。“吹く風を何いといけむ梅の花、散り来る時ぞ香はまさりけり”という古き言までも思い出でければ平家の公達は花箙とて優なり、やさしと口々にぞ感じ給いける』と称讃の言葉で現している。戦場の凄まじさ、殺伐さの中に、風流な香をただよわせて、何んとも表現のし難い風情である。
(謡曲史跡保存会)

入口の大鳥居の横にあったらしい、残念。



このときの梶原景季の歌


けふもまた 生田の神の恵かや ふたたび匂ふ 森の梅が香 梶原景季


とっても











【敦盛の萩】
なんというか、生田と平敦盛とは無関係に思えるが、能楽の世界では「生田」と「敦盛」は合体されており、ここは「ゆかりの地」となっている。
謡曲「生田敦盛」は全く知らないので感想は無し。


この写真も生田神社ホームページから拝借

 生田森の草庵内で甲胃を帯した亡霊の父に対面して軍物語をするあたりは誠に哀情の深さと、修羅の闘争のすざましさを見せつけられる。
これが謡曲「生田敦盛」である。
敦盛最期のことは、平家物語、源平盛衰記に見えるが、遺子のあったことは軍書類には見当らず、ただお伽草紙「小敦盛」に見られるのみである。
生田森は源平一の谷合戦の重大拠点であったが、今は知らぬ顔の静寂さである。

(生田神社のホームページの説明文を拝借)









【梶原の井】
こんなのもあったようだ。

(生田神社ホームページより)

 一名「かがみの井」とも云われ、壽永の昔(800年前)源平生田の森の合戦の折、梶原景季がこの井戸の水を汲んで生田の神に武運を祈ったと伝えられる。
別説では景季がこの井の水を掬った時、咲き盛った箙のうめの花影が映ったとの伝もある。
(生田神社のホームページの説明文を拝借)

これもとくに感想ありません。










【生田川】
六甲山系の摩耶山から流れ出た生田川は、昔は生田神社の近くを流れていた。洪水が相次いだため、近代に入り流路の変更を行い、現在の流れとなっている。
ここが大和物語で有名な「生田川物語」のゆかりの地。

(簡単に言うと)男二人が一人の女に求婚し、悩んだ女が生田川に身を投げた。残された男二人も続いて入水自殺。

※同じモチーフで、万葉集では「芦屋の菟原処女」、能楽では「求塚」となっており、生田川でなく、神戸市東灘区あたりの海に身を投げたことになっている。

現在の生田川

(Wikipedhia から写真を拝借)
川沿いは公園として整備されている。



すみわびぬ我が身投げてむ津の国の生田の川は名のみなりけり 大和物語




















次はゆっくり一人で訪れたい。





copyright(C)2012 すさまじきもの 〜「歌枕」ゆかりの地☆探訪〜 all rights reserved.