すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
「印南野」は典型的な台地地形であって、近代まで開発されないままの土地であった。 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によると
こんな、水利条件が悪く開発もされていなかった「印南野」が、どうして万葉故地になったのか、不思議である。 本当に不思議だ。 この謎を解くべく、兵庫県西部へ旅行に行った際に現地を訪問した。 ![]() ![]() ![]() 台地の上とのことであるが、現在では見渡す限り水田が広がっていた。周りに山も見えない。 往古は遥かにどこまでも続く原野だったのだろう。 【稲美中央公園】 今回の目的地は、稲美中央公園にある「万葉の森」。 ![]() 裏の駐車場に車を停めて公園をうろついたが、案内図が見つからなかったため、かなりの距離をさまよって歩いた。 雨が降ってきて大変だった。 ![]() 「万葉森林浴」のグラウンドゴルフってなんとも魅力的である。 ![]() ようやく「万葉の森」に到着。 ![]() 小雨と蚊の大群で大変であった。 ![]() ふと下を見ると、万葉の植物があった。 これは「ジュウニヒトエ」という植物らしい。イメージが合わないが。 ![]() 池とか東屋があったりして、京都の古寺に来ているようであった。 ただし、“水利条件の悪い、未開発の、台地地形”の「印南野」のイメージからは少し違和感があった。 ![]() 全国の「万葉の森」と同じく、無数の万葉植物が植えられていた。 ほとんど興味ないのでスルー。 園内には万葉歌碑が点在していて、目についたものだけ撮影した。 |
みづのへに森うつれるはうすみどり稲美のまほら静けくぞ燃ゆ | 万葉集 |
家にして 我れは恋ひなむ 印南野の 浅茅が上に照りし月夜を | 万葉集 |
明日よりは いなむの川の 出でていなば 留まれる我れは 恋ひつつやあらむ | 万葉集 |
印南野の 赤ら柏は 時はあれど 君を我が思ふ 時はさねなし | 万葉集 |
その他、歌碑情報はあるものの、当日の雨と蚊の攻撃により、探索を断念した歌は次の二首。 |
名ぐはしき 稲見の海の沖つ浪 千重に隠りぬ大和島根は | 柿本人麻呂(万葉集) |
後れゐて 吾はや恋ひむ稲見野の 朝萩見つつ去なむ 子故に | 阿倍大夫(万葉集) |
う〜ん、 「印南野」を詠んだ作者のうち、実際に「印南野」を分け入って、現地で感じた情感を歌で表現した人はいるのだろうか?という思いがする。 多分、播磨灘を行く舟から遠く陸地を眺め、「イナミノ」の語呂が良いので、なんとなく詠んだのだろう。 |