すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


五十鈴川(三重県伊勢市)




個人的な話。
私の高校受験のとき、本命は公立高校狙い、滑り止めのため私学を併願した。
家から近かったことから選んだ私学は浪速高校(大阪市住吉区)。
何も知らずに受験し、合格し、そのあと改めて学校案内を読み、浪速高校の学風や学校行事などを知り、驚倒した。

なんと入学直後の5月に伊勢神宮へ行き、神道学習としてまだ冷たい五十鈴川にふんどしで入って禊ぎを行うという学校行事があるらしい!
浪速高校は神社神道を建学の精神とする男子校であった!

とにかく、ふんどしの集団禊ぎだけは勘弁してほしいとの一心で突然勉学に励み、そのあとの公立高校に合格した経緯がある。





問題の五十鈴川

宇治橋から上流を望む。右手の山は神路山。


下流方向。


御手洗場。
ここが浪速高校の集団禊ぎの場。
いやはや感慨深いものがある。


観光客がたくさんいた。





五十鈴川の歌


君が代は久しかるべしわたらひや五十鈴の川の流れ絶えせで 大江匡房(新古今集)
やはらぐる光りにあまる影なれや五十鈴川原の秋の夜の月 慈円(新古今集
五十鈴川たえぬ流れのそこ清み神代かはらず澄める月影 伏見院(続千載集)
やはらぐる光りにあまる影なれや五十鈴川原の秋の夜の月 慈円(新古今集)
神風や五十鈴の川の宮ばしら幾千代すめとたてはじめけむ 藤原俊成(新古今集)
いすず川影見る水も底すみて神代おぼゆる峯の杉むら 本居宣長



だいたいの歌が、悠久の「君が代」はめでたい、って内容。









五十鈴川は別名「御裳濯(みもすそ)川」と呼ばれ、倭姫命(やまとひめのみこと)が御裳のすそを濯がれたことから名付けられたという伝説がある(伊勢神宮ホームページより)




御裳濯川の歌


君が代はつきじとぞ思ふ神風や御裳濯川のすまんかぎりは 源経信(後拾遺集)
照らし見よ御裳濯川に澄む月もにごらぬ波の底の心を 後醍醐天皇
いかばかり涼しかるらん仕へきて御裳濯川を渡る心は 西行
立ちかへりまたも見まくのほしきかな 御裳濯川の瀬々の白波 中院入道右大臣(新古今集)
神風や御裳濯川のそのかみに 契りしことの末をたがふな 前中納言匡房(新古今集




伊勢参宮名所図会

ちょっと見にくいが、真ん中に内宮があって、下の方を右から左へ五十鈴川が流れている。









この年になると、ふんどしで五十鈴川に入って禊ぎするのもいいかなと思ってきました。





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