すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


板井の清水(京都市南区)





藤原公任の撰による三十六歌仙に倣い、鎌倉時代の代表的歌人36人を選んだのが新三十六歌仙。


私の自宅の近所にある和泉市久保惣記念美術館には、江戸時代の土佐光成による新三十六歌仙図が収蔵されている。詠人一人ずつの風貌の特徴を描いた人物像と、代表的な歌の書が一体となった歌仙絵は、いくら見ても飽きない。
(版権の都合上、画像は無し)


その中の一人、俊恵法師の歌仙絵に書き綴られているのが次の歌


ふる里の板井の清水み草いて月さへすまず成にけるかな 俊恵法師(千載和歌集)


俊恵法師は東大寺の僧で、百人一首の、慕う人を夜通し待ち焦がれる女性の気持ちを詠んだ「夜もすがら思ふこころは〜」の作者。

井戸に草が生えたので月の影も映らない、という内容。
水面に映る月を、井戸に月が住むと表現するところが情趣深い。「住む」と「(水が)澄む」も掛けている。

さて、板井の清水とは板で囲った井戸のことで、どこにでもある井戸のようだが、実はこの歌の井戸は、下久世の福田(ふくでん)寺にある井戸のことらしい。

俊恵法師は、晩年この寺に住み込み、荒れ果てた庭を見て詠んだと言うこと。





現在の福田寺 ・・・ 京都市南区久世殿城町5




都名所図会「久世里」 (Wikipedia)

赤い線で囲ったところが板井の清水
手前右に流れているのは桂川
















板井の清水の本歌はこれ


我が門の板井の清水里遠み人しくまねば水草おひにけり 古今和歌集





そして、影響を与えた歌はこれ


みくさゐる板井の清水としふりて 心の底をくむ人そなき 続古今和歌集














なんとなく入りにくそうだったので、福田寺には入りませんでした。
歌碑があるそうです






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