すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
周防なる |
万葉集 |
歌枕としての岩国山はこの万葉歌から始まる。 この歌は、九州から都へ帰る旅人を送る宴席で詠まれたもので、道中にある岩国山を越える道は荒れているので、峠の神様にきちんと手向けしなさい、という内容。 この後に岩国山を詠んだ歌はこの歌を本歌とした。 |
逢ふことは君にぞかたき手向して岩国山は |
藤原家隆 |
岩国のあら山道はなほ遠し 暮にぞかかるあゆめ黒駒 | 夫木和歌抄 |
手向せしいはくに山の峰よりも猶さがしきはこの世なりけり | 宗尊親王 |
立ちかへり見る世もあらば人ならぬ岩国山もわがともにせむ | 今川了俊(道行きぶり) |
とまるべき宿だになきを駒なづむ岩国山に今日や暮さむ | 今川了俊(道行きぶり) |
足乳根の親に告げばや荒してふ岩国山も今日は越えぬと | 今川了俊(道行きぶり) |
荒きその道なりとても帰るさは岩国山も踏みならしてん | 細川幽斎(九州道の記) |
岩国山を「越え」、岩国山に「手向け」し、岩国山の道は「荒く」、そんな歌が詠まれた。 現地へ訪問 え〜と岩国山とは、有名な錦帯橋の近くの岩国城のある山のことだと思っていた(横山という)。 歌枕の岩国山は、岩国市の柱野から玖珂まで、現在のJR岩徳線に沿った峠道のこと。欽明路峠という。旧山陽道である。 今回は欽明路峠を西側の玖珂から東側の柱野まで車で越えてみた。 【欽明路峠の連続写真】 ![]() ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 実に静かな峠道であった。 対向車もなかった。 地図を見ると、山陽新幹線やJR岩徳線、国道2号線がこの峠を通っているが、全部トンネルで抜けている。 交通の要衝地でありながら、地上には旧山陽道の峠道だけが、通行する車もなく存在している、そんな場所であった。 |