すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


石見潟(いわみがた)(島根県江津市)











「石見潟」は石見国を代表する歌枕である。
Wikipedia「歌枕の一覧」には石見国の歌枕として、石見潟のほかに高角山と鴨山がノミネートされていたが、石見潟はプロ野球レベルなのに対し、高角山と鴨山は高校野球の地方大会予選惜敗といったレベルかな。


ただ、石見潟のように旧国名が歌枕になっている例は、あまりない。


歌枕歌ことば辞典の「名所歌枕一覧」を見てみると、旧国名が付いた歌枕は武蔵野、甲斐峰、伊勢、因幡山、播磨潟と、この石見潟ぐらい。

そして国名が絡んでいるので、ある特定の場所ではなく、その地域全体を包含するような意味合いの歌枕となっている。(例外は因幡山)

そのような意味で、石見潟とはまさに石見国の海辺ということになり場所を特定しがたいのだが、一方で、歌の詠み手も実際に石見国を訪ねたわけでなく、京の都に滞在しながら、遠く離れた石見潟を詠んだのだろう。

石見潟は、「言ふ」や「言ひ難し」と掛けやすい枕詞として重宝されたもの。

だから私の今回の石見潟の訪問地も、石見国の海岸ならどこでもよかったのであるが、やっぱりそれなりの由緒もほしいので、江津市の都野津の海岸に行ってみた。都野津は柿本人麻呂ゆかりの地だ。




《石見潟激写》

大崎鼻の辺りから東方向を望む
まあ、この辺りが石見潟だろう




浜田市国分町の海岸は、石見海浜公園として整備されていた











そんな石見潟を詠んだ歌


つらけれど人には言はずいはみ潟うらみぞ深き心ひとつに 拾遺和歌集
「浦見」と「恨み」を掛ける


かけてだにまたいかさまに石見潟なほ波高し秋の潮風 藤原定家(続千載和歌集)


石見潟言ふにかひなき世の中のつらさに堪へぬ身とやなりなむ 拾玉集


いはみ潟うらみぞふかき沖つ波よする玉藻にうづもるる身は 古今和歌六帖


いはみ潟そらもひとつにゆく舟の片帆に消ゆる夕づく日かな 新勅撰和歌集


石見潟ふけゆくままに月ぞすむ高角山に雪や消ゆらん 林下集


これやこの浮き世を巡る舟の道石見の海の荒き波風 細川幽斎(九州道の記)












石見潟はプロ野球レベルですが下位球団です





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