すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


加賀(島根県松江市)







島根半島の日本海側に「加賀(かか)潜戸(くけど)」という景勝地がある。
日本海の荒波の長年の浸食でできた海食洞が二つあり、観光船から下りて見学することもできるという。



新型コロナウイルス感染拡大防止のため、観光船は欠航していた。(2020年夏)



加賀の堤防。
ソーシャルディスタンスが求められており、釣り人も少なかった。



加賀の港から潜戸を眺望する。
かなり見えにくいが、赤い灯台の右に黒くなっているところが洞穴。
観光船は洞穴の中に入っていくらしい。








現地にあった案内板


出雲地方の地形はとても興味深い。
いつか、地学を目的として、再度出雲地方を訪問したいと思う。





これも現地にあった案内板から。
島根半島の誕生の経緯。









いやはや興味は尽きない。











え〜と、戦国大名の細川幽斎が豊臣秀吉の九州攻めに従軍するべく、丹後の田辺城から海路で九州に向かう途上、山陰の観光地を巡っている。細川幽斎は大名であると同時に、当代一流の文化人であり古今集の歌道伝承者として認められていた。細川幽斎は九州への道中記を「九州道の記」としてまとめ、現在に伝わっている。


これによると、細川幽斎は伯耆国の御来屋を朝に出航し、美保関を見学した後に加賀の港まで回航し、当地の漁師の家に泊まっている。


その時、乳飲み子を抱えたお母さんの姿を見て詠んだのがこの歌


あはれにもいまだ()をのむ海士の子の加賀(かか)のあたりや離れざるらん 細川幽斎(九州道の記)


漁師の乳飲み子は、かか(加賀=お母さん)から離れられないのだろうと、きついダジャレの歌を詠んでいる。
古今集の歌道伝承者として、ダジャレは外せないのだろう。











加賀の潜戸は、出雲国風土記に佐太大神(地元の神様)が生まれた地との伝承があり、古来神域とされていたようだ。
そんな加賀の潜戸を詠んだ歌


あれましゝ神の御代より伝へ来て 世にふるごとも加賀の神埼 高濱貞方(出雲国名所歌集)








転載フリーの「しまね観光ナビ『加賀の潜戸』」の写真

洞穴の中から夕陽











乳(ちち=父)と加賀(かか=母)を対比させたのだとずっと思っていました。
よく読むと、乳は父でなく、普通に母乳のことでした。






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