すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


鏡山(福岡県香春町)





歌枕の世界で「鏡山」といえば、まず滋賀県竜王町の鏡山が思い浮かぶ。中仙道の宿場町で、都にも近いことから多くの旅人が行き交い、歌詠みポイントとなっていたようだ。
次に思いつくのは佐賀県唐津の鏡山。佐用姫(さよひめ)領巾振(ひれふ)り伝説で有名。源氏物語では玉蔓に結婚を迫る大夫監が送った田舎びた歌に登場。


さて、今回訪問した福岡県香春町の鏡山はどうなんだろうか。
万葉集には4首ほど収録されており、多分三つの鏡山うちで一番古い歌枕であろう。万葉集では奈良時代の河内王と手持女王の恋の歌が詠まれている。現地の案内板にも「恋の里・鏡山」記されていた。ところが万葉集以降にこの地を詠んだ歌に出会ったことがない。(探せていないだけであるが)
もともとは神功皇后が三韓征伐の成功を祈願した時に用いた鏡をこの地の山に奉じたことから、その山が鏡山と呼ばれるようになったという由緒深い歴史があるのだが、どうもその後は都の歌人たちから忘れ去られたようだ。








■鏡山に訪問


なんとも由緒ありそうな雰囲気である。



山上に向って石段があった。
登ろうかどうしようか迷った末に、せっかく九州まで来たのだから悔いがない旅行にしたいと思い、また山上には素晴らしいモノがあるかも知れないと、登る決心をした。


     
これはきつかった!164段もあった。
訪問したのは8月中旬の時期。歳をとってから、虫とか爬虫類が苦手になってきたので、その意味でも恐怖感を味わった。



山上にあったのはこの鏡山大神社の社殿。これだけだった。
木が生い茂っているので眺望もなく、滞在時間およそ20秒ぐらい。


    
下りるのも大変だった。



道の駅から眺めた鏡山






こんな鏡山を詠んだ歌


梓弓 引き豊国鏡山 見ず久ならば 恋しけむかも 万葉集
毎日見ている豊国の鏡山も久しく見ないでいたら
恋しくなることであろう(現地の説明板)
 


鏡山大神社の入り口(石段の下)に歌碑








手持女王の歌三首

大君の 和魂あへや 豊国鏡の山を 宮と定むる 手持女王(万葉集)


豊国鏡の山の 岩戸立て 隠りにけらし 待てど来まさず 手持女王(万葉集


岩戸破る 手力もがも 手弱き 女にしあれば すべの知らなく 手持女王(万葉集


鏡山大神社の入り口の左50メートルに歌碑





鏡山大神社の左手に続く丘陵地に手持王女の墓がある。


















前に歩くときと、階段を上るときに使う足の筋肉は
別のものであることがよく分かりました。






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