すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


釜戸(かまど)の山(岐阜県瑞浪市)








「和歌の歌枕地名大辞典」によると、『釜戸の山』は美濃国土岐郡の歌枕とされており、夫木和歌抄から証歌が示されている。


美濃の国かまどの山の日暮るれば(けぶり)絶えせぬ嘆きをぞする 夫木和歌抄


「釜戸」という地名が、「煙」を連想させ、「嘆き」に導いている。とても分かりやすい。


歌枕になるべくしてできた地名のようだが、都から遠い美濃国の山奥だからか、歌の用例も少なく、結局は歌枕として定着しなかった。


尚、「釜戸」の地名の由来は、この地に鎮座する中切八幡神社の傍らに巨石の洞があり、ご飯を炊く「(かまど)」に似ていたことから、誰言うとなく「かまど」と呼ばれるようになったとか。




■ 現地訪問

中切八幡神社

社頭から石段が延々と続き、心も体も折れそうになった。



八幡神社の社殿。



社殿の周辺で、かまど状の巨石を探してみたが見つからなかった。



山じゅうに巨石が転がっていた。


結局、社殿のある山の上では見つけることが出来ず、途方に暮れて石段を下りてきて、周辺を歩いてみて、ようやく“発見”。



これが「竈」の巨石。



史跡として整備されていたが、グーグルマップには未登録だった。




大きな竈のモニュメントがあった。





その他、釜戸を詠んだ歌


天地の声のどけきはかまど山草木とともに春は来にけり 西行法師

春は花秋は柴たくかまど山霧もかすみも煙なるらん 源三位頼政

この二首は現地の案内板に掲載されていたもの
























釜戸山の緋桜(ひざくら)


散るたびにもえこがれても惜しげきはかまど山なる緋桜の花 蓮信法師

いにしえの花かぐわしき緋桜も今はむなしく名のみ残れり 朴雲和尚




往昔から「釜戸山の緋桜」は有名で、行き交う旅人たちを楽しませていたらしい。

1723年、身延山久遠寺の蓮信法師が、旅の途上、釜戸山の緋桜が散るのを見て、惜念の歌を詠んだ。

それに対し、近くにある龍雲山宝珠寺の明治大正時代の住職であった朴雲和尚が返歌を詠んでいる。

今は緋桜もなくなり、「釜戸山の緋桜」という名前だけが虚しく伝わっているとの内容。

およそ200年の歳月を経て、歌が往来したわけであるが、そもそも久遠寺の蓮信法師は返歌を期待して詠んだのかな、どうなのかな。





残 念






上記の二首の歌碑を写真撮影したが、表と裏を間違えた。
風雪によって碑文は摩滅したのだろうと思ったが、こちらは裏面だった。



せっかく遠くまで行ったのに、残念で仕方がない。
こちら側から撮るべきだった。



ちなみに、新たに緋桜も植えられていなかった。




(ご参考)


龍雲山宝珠寺「蓮信法師と朴雲和尚の和歌」













緋桜ってどんな桜なのだろう





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