すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
亀の瀬(大阪府柏原市)
大和川が奈良県から大阪府柏原市へ流れ込む山あいの場所は険しい渓谷をなしているが、地学的には「地滑り」多発地である。 専門的には水を通しやすい地層の上に水を通しにくい地層があることから地滑りが発生する。 もし、この地で次に地滑りが発生した場合、大和川の流れを堰き止めて、奈良盆地が古代のように水で浸されることになるかも知れない。 そんなことにならないように、地滑り対策の工事がなされている。 そんなわけで、亀の瀬一帯は立入禁止になっていた。 この地は古代から大和から難波宮へ通る重要ルートであり、万葉集にも次の歌が収録されている。 |
父君に 我れは愛子ぞ 母刀自に 我れは愛子ぞ 参ゐ上る 八十氏人の 手向けする 畏の坂に 幣奉り 我れはぞ追へる 遠き土佐道を | 石上乙麻呂(万葉集) | |
父君にとって私は愛しい子、お母様にとっても愛しい子。(そのような名門の出身である私が土佐へ配流になってしまった)都へ上る多くの人々が手向けする、恐の坂に捧げものをして、私はたどっていく、遠い土佐へ向かう道を。(柏原市のホームページより) |
この右手の崖が川に向かって滑ってくるらしい。 「大和名所図会」にも荒れ狂う波の様子が描かれている。 (早稲田大学図書館) この川の中に「亀石」発見! 図会の中にも亀石があった。 こんな亀の瀬を詠んだ歌が柏原市のホームページに紹介されていた。 |
亀の瀬川 早瀬の浪の 音添えて 岩切り通す 峰の松風 | 伴林光平 |
亀瀬山之嵐、紅葉影脆、龍田川之浪、白花声寒 | 藤原道長 |
満山紅葉破心機 況遇浮雲足下飛 寒樹不知何処去 雨中衣錦故郷帰 | 菅原道真 |
昌泰元年(898)10月、宇多上皇が吉野行幸の帰途、竜田越えで住吉に向かった。これに同行した道真が、亀の瀬あたりで詠んだとされる。 (柏原市のホームページより) |
柏原市関連の歌の紹介に際し、なにかと柏原市のホームページを参考にさせていただいている。 和歌にとどまらず、地史などの情報も充実。 もし興味があれば訪問してください。 |