すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


金沢八景(横浜市金沢区)








「近江八景」以来、「八景」がお気に入りとなり、全国八景巡りをしようかと考えたこともある。

但し八景選定当初は和歌が添えられていたものの、現在に伝わっていない八景も多い。

八景は、江戸時代に選定されたものが中心だが、昭和時代に住民の公募で選ばれたものも一定数あり、晴嵐や帰帆、晩鐘などの八景ルールに捕らわれなず自由な発想で選ばれている。

全国に400ヶ所ぐらいの八景があるらしく、全国八景巡りをするとなると、400ヶ所の × 8景で、3200ヶ所を訪問しなければならず、大変だ。

さて、今回訪問した金沢八景は、八景の中でもメジャー級の存在である。東の金沢八景、西の近江八景として賞揚されているらしい。

個人的には、あまり首都圏に土地勘がなく、鉄道駅に「金沢八景」という駅名があるのはなんとなく知っていたが、景勝地としての金沢八景は石川県の金沢周辺のことだと数年前まで思い込んでいた。

とにかく、佳景の集積である「金沢八景」がそのまま駅名になったというのは、どんな経緯があったのだろうか興味がある。

当初の訪問計画では、金沢八景それぞれの対象地は狭いエリアに集中しているため徒歩で回ってみようと考えていた。金沢文庫駅下車からの巡回ルートを策定していた。その後の、鎌倉へ向かう路線バスも見つけていた。

ところが!

訪問当日は大雨で、しかも風速20メートル以上の風も予想される天気予報となった。

このため急遽、レンタカー利用に変更し、車で鎌倉からの帰りに金沢八景に寄る行程へ変更した。

この日は朝からずっと大雨で、服もズボンも靴もびちゃびちゃに濡れてしまい、全く意気が揚がらなかった。














■ 現地訪問


金沢八景、「平潟落雁」の地。
雨もひどかったが、風が凄すぎて、差している傘が反対に向きそうなところを押えながら撮ったのがこの写真。



琵琶島。鎌倉時代から残る人工島。見る余裕無し。



琵琶島と平潟湾。
月も見えず、夕陽でもなく、雁も飛んでおらず、雪も降っておらず、いやはや蕭殺とした風景であった。



手前がシーサイドラインの金沢八景駅。奥に京急の金沢八景駅がある。



金沢八景の幟



こんな駅名があるとは感動モノである。






大雨と暴風から身を守るため、これだけで訪問は終了した。










金沢八景 (京極高門)

小泉夜雨(こずみのやう) かぢまくら とまもる雨も 袖かけて 涙ふる江の むかしをぞ思ふ 手子神社(小泉弁財天)辺り
称名晩鐘(しょうみょうのばんしょう) はるけしな 山の名におふ かね沢の 霧よりもるゝ 入あひの声 称名寺の晩鐘
乙舳帰帆(おつとものきはん) 沖津舟 ほのかに見しも とる梶の 乙艫の浦に かへる夕波 海の公園から沖を眺める
洲崎晴嵐(すさきのせいらん) 賑へる 洲崎の里の 朝けぶり 晴るる嵐に たてる市人 洲崎町辺りに市が立っていた
瀬戸秋月(せとのしゅうげつ) よるなみの 瀬戸の秋風 小夜ふけて 千里の沖に すめる月かげ 瀬戸橋付近から見上げた秋月
平潟落雁(ひらがたのらくがん) 跡とむる 真砂に文字の 数そへて 塩の干潟に 落る雁かね 現在の平潟湾
野島夕照(のじまのせきしょう) 夕日さす 野島の浦に ほす網の めならぶ里の あまの家々 野島町へ夕照橋が架かる
内川暮雪(うちかわのぼせつ) 木陰なく 松にむもれて 暮るるとも いざしら雪の みなと江のそら 内川橋付近の雪景色








浮世絵 (歌川広重)

小泉夜雨(こずみのやう)
称名晩鐘(しょうみょうのばんしょう)
乙舳帰帆(おつとものきはん)
洲崎晴嵐(すさきのせいらん)
瀬戸秋月(せとのしゅうげつ)
平潟落雁(ひらがたのらくがん)
野島夕照(のじまのせきしょう)
内川暮雪(うちかわのぼせつ)
(Wikipedia「金沢八景」)






金沢八景ゆかりの地









金沢を詠んだ歌


誰ここにほりうつしけむ金沢や黄なる花さく菊の一本 道興准后(廻国雑記)









**********




次回行く機会があれば、称名寺に行きたいです。



和歌
copyright(C)2012 すさまじきもの〜「歌枕」ゆかりの地☆探訪〜 all rights reserved.