すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


観世音寺(福岡県太宰府市)





都府楼纔看瓦色
観音寺只聴鐘声
菅原道真


     都府楼は(わずか)に瓦の色を看る 
     
観音寺はただ鐘の声を聴く


菅原道真は大宰府に流されたのち、屋敷の門を固く閉じて蟄居していた。
そこからは、遠くに大宰府政庁の楼閣の瓦が見え、観音寺の鐘の音が聞こえた。


菅原道真の頃から観世音寺の鐘は有名だったらしい。
一説によると、京都の妙心寺の梵鐘と同じ型枠で作ったものらしく、七世紀に鋳造されたそうだ。

梵鐘の音の優劣については全くよく分からないが、現在でも「日本の音風景100選」に選定されているので相当なものだろう。

観世音寺を詠んだ歌の多くが、鐘を題材にしている。


荒れはてし西の都に来てみれば 観世音寺の入相の 仙崖和尚
江戸時代の禅僧

観世音寺ゆふべのに花散れば 身も世もあらず泣かまほしけれ 柳原白蓮

手をあてて(たふと)き冷たさに (つま)叩き聴くそのかそけきを 長塚節

筑紫なる遠の御門の跡どころ かんぜおん寺けさもなる 山崎斌

筑紫なる観世音寺の音を思ふしづけさ 歳のあしたに 釈迢空

()えば 秋のこころに観世音 河野青雲師

麦の秋観世音寺を罷で来て 都府楼の跡は遠からなくに 北原白秋









現地訪問



■観世音寺 ・・・ 福岡県太宰府市観世音寺五丁目6番1号


参道はこんな感じで、鬱蒼とした古木が連なっていた。



観世音寺の本堂。
雨が降っていたためか、参拝客はほとんどいなかった。



そしてこれが観世音寺の梵鐘。国宝。





















大晦日の除夜の鐘ぐらいしか、鐘の音を聞くことがありません。






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