すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


辛の崎(からのさき)(島根県江津市)







つのさはふ 石見(いわみ)の海(こと)さへく 辛の崎なる 海石(いくり)にぞ深海松(ふかみる)()ふる 荒礒(ありそ)にぞ 玉藻は生ふる 玉藻なす (なび)き寝し子を 深海松の 深めて思へど さ寝し夜は (いく)だもあらず はふ蔦の 別れし来れば 肝向(きもむ)かふ 心を痛み 思ひつつ かへり見すれど 大舟の 渡の山黄葉(もみじは)の 散りの(まが)ひに 妹が袖 さやにも見えず 妻隠(つまこも)屋上の山の 雲間より 渡らふ月の 惜しけども 隠らひ来れば 天伝(あまづた)ふ 入日さしぬれ 大夫(ますらお)と 思へる吾も 敷(しきたへ)の 衣の袖は 通りて濡れぬ 万葉集


辛の崎の駐車場に歌碑


反歌
青駒が 足掻(あが)きを速み 雲居にぞ (いも)があたりを 過ぎて来にける 万葉集


反歌
秋山に 散らふ黄葉(もみじは) しましくは な散り乱ひそ 妹があたり見む 万葉集




石見国に赴任していた柿本人麻呂が、妻を残して都へ戻るときに詠んだ歌。愛しい妻を思い出すと泣いてしまうという内容。


「辛の崎」の暗礁の深いところに生えている海藻のように、深く妻を愛したとの意味だが、この「辛の崎」は江津市の大崎鼻のことらしい。


大崎鼻は、単調な島根県の海岸線のなかで、山稜の先端が日本海の荒波に削られて見事な海食崖を形成している。


現在は崖の上に灯台が設置されている。灯台からは、石見海岸の素晴らしい光景が見えるらしい。


グーグルマップで確認すると、灯台のすぐ近くまで来るまで車で行けるようなので、行ってみた。







しかし、灯台へ上る道は閉鎖されていた。





上り坂を歩く気にもなれず、断念。




とりあえず海岸から「辛の崎」を撮影してきたが、近づきすぎたのか灯台も見えない。


まあ、しょうがないなと思って、次の目的地に向かって車を走らせていたところ、国道沿いに「人麻呂ゆかりの地(辛の崎)」の看板が見えた。


グーグルストリービュー


対向車が迫っていたが、強引に右折した。





着いたところは、大きな駐車場があり、上記の長歌の立派な歌碑があった。





駐車場から海の方を見る。この先が「辛の崎」だが、灯台も見えない。





ふと見ると、灯台への行き道の看板が見えた。結構距離がありそうなので断念。


あとから確認すると、この駐車場の西側に「展望広場」があり、そこから灯台が見えるとのこと。


え〜、今回の石見旅行は5年近くかけて構想を練ってきたが、なにかと準備不足が目立つ旅となった。
「現地に行ったらなんとかなるやろ」ではないなと思った。












最近、長歌もいいなと思ってます





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