すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


韓亭(からとまり)(福岡市西区)





博多湾の西の端、糸島半島の東岸に唐泊港がある。
万葉集の世界では、「韓亭」の字を充てる。
天然の良港で、古くは外洋へ船出する前の風待ち港であった。

天平八年、遣新羅使の一行は荒津の浜を出航したが、海が荒れていたため、韓亭の港で三日間停泊した。

その時に遣新羅使たちが遠く都を偲んで詠んだ歌が万葉集に収録されている。





筑前の国の志麻の郡の韓亭に至り、船泊りして三日を経ぬ。
時に夜月の光、皎々として流照す。たちまちにこの華に対し、
旅情悽噎す。おのもおのも心緒を陳べ、いささかに裁る歌六首


大君の 遠の朝廷と 思へれど 日長くしあれば 恋ひにけるかも 万葉集

旅にあれど 夜は火燈し 居る我れを 闇にや妹が 恋ひつつあるらむ 万葉集

韓亭 能許の浦波 立たぬ日は あれども家に 恋ひぬ日はなし 万葉集

ぬばたまの 夜渡る月に あらませば 家なる妹に 逢ひて来ましを 万葉集

ひさかたの 月は照りたり 暇なく 海人の漁りは 燈し合へりみゆ 万葉集

風吹けば 沖つ白波 畏みと 能許の亭に あまた夜ぞ寝る 万葉集


唐泊地域漁村センターに六首の歌碑






能許(のこ)は博多湾内の能古島のこと。韓亭の沖に浮かぶ。








万葉集以外の歌


すみわぶる 身はうつせみの から泊 うきたる舟や 此の世なるらん 正徹


しきしまの 大和にも あらぬ心地して いとどうき寝韓泊かな 本居宣長


浪風の うき寝ぞ からき唐泊 ひとの国にも ためしなきまで 三条西実隆



う〜ん、よく分からないが、万葉集では船が何日も停泊していたので、海上に「浮き」「浮き寝」していたとイメージができたのか、「浮き」から「憂き」が導かれ、この世は「憂きもの」であり、「憂き寝」に如くぞ無し、という風に展開させたのかな。よく分からないが。








■現在の唐泊の様子


唐泊漁港



以前はカタクチイワシ漁が盛んであったが、最近は牡蠣の養殖が中心らしい。



冬は漁協のカキ小屋がオープンするらしい。



漁村



漁村の道





GoogleEarthで唐泊漁港















堤防で海釣りをしている人がたくさんいました。
何が釣れるのかな。





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