すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


風越山(かざこしやま)(長野県飯田市)





風越山は、飯田市の西に聳え立つ山。木曽山脈の主稜線から伊那谷に向かってせり出している屋根の先端の高まりで、あたかも独立峰のように周りより高くなっている。飯田市からは塊まり感のある三角形に見える山容で、飯田市のシンボル的な山である。


そんな風越山は、その名の通り風が山を越えてくることからの命名であろうが、それは山頂付近に鞍部(凹み、コル)があって、そこが風の通り道になって、伊那谷に吹き込んでくるとのこと。


古来から風越山は風で有名だったようで、信濃国の数少ない歌枕の一つになっている。中山道が整備される前は伊那谷を東山道が通っていたので、風越山の由来が京の都に伝わっていたのだろう。





■ 風越山を詠んだ歌



かざこしをゆうこえくればほととぎす 麓の雲のそこに鳴くなり 藤原清輔(千載和歌集)



白妙の雪吹きおろす風越の 峰より出づる冬の夜の月 藤原清輔(続後撰和歌集)



吹き乱る風越山の桜花 麓の雲に色やまがはん 夫木和歌抄



信濃守にてくだりけるに風越のみねにてよめる
風越の峰の上にて見るときは 雲は麓のものにぞありける 藤原家経(詞華和歌集)



かざこしの雲吹はらふ嶺にてぞ 月をばひるの物としりぬる 林葉和歌集



たに河のながれやいづくかざこしの 峯より花の浪ぞしづめる 教長集



かざこしの嶺のつづきに咲く花は いつ盛ともなくや散るらむ 西行法師(山家集)



風越の峰にたまらぬ白雪は 晴れゆく空になほぞ降りける 平忠度

















伊那谷から風越山を撮影しようとしたが、雲が垂れ込めていて、こんなイマイチな写真になった。


これではどれが風越山か分からない。



ところがなんとグーグルマップのストリートビューに同じ場所からのスナップがあった。雲がなくて山の形が明瞭に見える。
ちょうど送電鉄塔の方角にある三角の山が風越山。




飯田市のホームページから借用




これはWikipedia「風越山」から借用

























【追記】


木曽路にも風越山がある。
同じ日本アルプスの中に二つの風越山があるわけで、実にややこしい。
しかもなお、木曽路の名所を選んで和歌を添えた「木曽八景」に木曽の風越山が選ばれていて名所歌が詠まれているので、ほっておくこともできない。といって専用のページを設けるほどでもない。
よって、ここに追記として風越山(木曽路)を紹介する。


木曽路の風越山。木曽の桟の越前屋(そば屋)越しに撮影。



吹くもまたあらしはよはきたえだえに くもはれ残る風越しの春 木曽八景













風越山ってネーミングがすこぶる良いと思います










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