すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


貴船(きぶね)(京都市左京区)






男に忘れられて侍りけるころ貴布祢(きぶね)に参りて
みたらし川に蛍の飛び侍りけるを見てよめる


おもへば沢のも我が身よりあくがれいづる(たま)かとぞみる 和泉式部(後拾遺和歌集)


貴船神社 結社 (中宮)に歌碑



御返し

おく山にたぎりて落つる滝つ瀬のちるばかり物なおもいそ 貴船神社(後拾遺和歌集)






多くの歌が詠まれた歌枕には、象徴的な歌があり、それが本歌となって歌枕のイメージを作り上げ、そのあとに詠まれる歌に大きな影響を与えた。

和泉式部の「おもへ〜」は正に貴船のシンボル的な歌である。

和泉式部は貴船神社に参り、恋に悩む心を歌に詠み上げたところ、貴船神社の神様が歌を返してきて、あまり深く考え煩うなと、和泉式部を励ましたという内容。

これらの歌を本歌として、「玉((たま)」、「ちる」が詠み込まれた。そして奥宮の参道に流れる川は「思ひ川」となり、貴船川の川沿いの巨石は「蛍岩」と呼ばれるようになった。

この和泉式部のエピソードを踏まえて、現在では京都有数の縁結びの神様になり、多くの恋に悩む女性が参拝している。

いやはや和泉式部の影響は大きい。










■ 貴船を詠んだ歌


千早振る神の見るめもはづかしや身を思ふとて身をやすつべき 和泉式部


木船川山もと影の夕暮れに散る波はなりけり 和泉式部


いく夜われ波にしをれて貴船川袖に散るもの思ふらむ 藤原良経(新古今和歌集)


貴船川ちる瀬々の岩波に氷を砕く秋の夜の月 藤原俊成(千載和歌集)


貴船川岩うつ波にとぶ誰があくがるるにかあるらむ 後鳥羽院集



貴船川は鴨川の源流であり、激しく流れる清流を叙景的に詠まれている。


















■ 現地訪問


2023年10月、鞍馬から山伝いに貴船神社まで歩いた


貴船神社の本宮の社頭。ここから石段を上る



本宮の社殿、ガラス張りで、ワンランク上の装いであった



境内は大変混雑していたが、そもそも境内が狭いのが原因
外国人も多くいた



本宮から貴船川沿いに上っていくと中宮にあたる結社があった
ここに和泉式部の歌碑がある



さらに上っていくと、奥宮に至る
これは奥宮参道の入り口



参道をはいったところに「思ひ川」があった
これは「思ひ川」に架けた「おもひがわ橋」



手前側に「思ひ川」の石碑



これが「思ひ川」の流れ
普通の小川であった



奥宮、入り口



奥宮、舞殿、その奥が本殿。よく整備されていて心が洗われる



これが貴船川、京都の鴨川の源流



有名な貴船の川床



貴船川に架かる橋、鞍馬へつながる



ずっと下流にあった蛍岩



蛍見物をしてみたいが、大混雑するのかな








京都名所図会 「貴船社」

国際日本文化研究センター













訪問計画を立ててから10年後に訪問
訪問2年後にこのページを制作
足かけ12年の歳月が流れて今日に至る





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