すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
衣笠(京都市北区)
大学のキャンパスと歌枕って、親和性があるように思う。 たとえば大阪大学の豊中キャンパスの敷地内に摂津の代表的な歌枕『待兼山(まちかねやま)』がある。「待ちかねる」というダジャレ系の歌が多く作られた。ホトトギスや観月のテーマで詠まれているが、歌人の中で現地まで本当に行った人は少ないだろう。そんな大阪大学の学園祭は「まちかね祭」。待兼山は大阪大学の代名詞のようになっている。 京都大学は『吉田山』。吉田山には吉田神社が鎮座し、神楽を奏でる系の歌が詠まれた。その吉田山の西麓に京都大学の「吉田キャンパス」がある。 吉田って、一般的な名前すぎて、いかにも地味である。 京都産業大学は『神山』。上賀茂神社の背後に聳える山。上賀茂関係の歌が詠まれた。この神山の北麓に京都産業大学があり、「神山キャンパス」と呼ばれている。学園祭も「神山祭」。 近畿大学のキャンパスは大阪の東大阪市、生駒山の東麓にあるが、ここで開催される学園祭の名称は「生駒祭」。『生駒山』は万葉集以来の歌枕の地。また伊勢物語では在原業平が高安の女に会うために生駒山を越えてやってきた。 京都造形芸術大学は東山三十六峰の一つ、「瓜生山」の裾野にあり、「瓜生山キャンパス」と呼ばれる。学祭は「大瓜生山祭」。『瓜生山』はマイナーな歌枕であるが、紅葉や鹿とともに詠まれている。 さらに、京都工芸繊維大学は『松ヶ崎』。「松ヶ崎キャンパス」があって、学祭は「松ヶ崎祭」。宝ヶ池の南に位置し、昔からの伝統のある町であるが、歌枕としては地味。京都工芸繊維大学も地味。 龍谷大学の本拠地は京都市伏見区の「深草」にある。深草は『鶉』が鳴く里として歌が詠まれた。また深草少将の百夜通いの地としても有名。 佛教大学は「紫野キャンパス」。まさに歌枕銀座のような場所にある。なお、この紫野は額田王と天武天皇の相聞歌で有名な蒲生野の紫野ではない。 甲南大学の学祭は「摂津祭」。『摂津』は地域の名前ではなく、律令国家の国名なので、スケールが大きい。歌枕とするには無理があるかな。 和歌山大学は紀ノ川の北岸、和泉山地を切り開いた土地にキャンパスがある。ここに移転する前は、和歌山城の近くの『吹上』にあって、そこは「吹上キャンパス」と呼ばれていた。吹上は、紀ノ川河口の砂洲に位置し、風光明媚な名勝地であったようで、歌枕の地となっていた。 関西大学は『千里山』。千里山キャンパスは広大な敷地で、名神高速がトンネルで通過している。摂津名所図会によると、千里山の古称は『寝山(ねやま)』。寝山を詠んだ歌が摂津名所図会で紹介されている。 ![]() ここからこのページの本題。 立命館大学と言えば『衣笠』。 衣笠山の麓に「衣笠キャンパス」がある。 春の陽気に誘われて、衣笠山周辺をレンタサイクルで回ってみた。 ![]() 仁和寺の駐車場から見える衣笠山(右手のお椀型の山) ![]() 竜安寺の前から衣笠山 ![]() 竜安寺の駐車場から衣笠山 ![]() 指月林の青少年研修所から衣笠山を眺望 建物が密集していたりして、なかなかベストショットが撮れなかった。 次は立命館大学の衣笠キャンパス ![]() 休みの日だったので閑散としていた。 ![]() じつは、立命館大学を受験し合格したのだが、この圧迫感が耐えられず、入学しなかった過去がある。 こんな衣笠を詠んだ歌 |
春雨に衣笠山を来てみればいとども濡るる我が袂かな | 源国信 |
予想通り、雨と笠の縁語のオンパレードの歌。 |