すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


北畠神社(三重県津市)




毎回同じ言い訳になるが、日本史を勉強してこなかったので、南北朝とか建武の新政とかよく分からない。
分からなくても、それほど不自由なく世の中を生きていけるのだが、名所旧跡巡りが趣味である者にとっては致命的な問題である。


今回訪問した北畠神社は三重県津市の美杉という山奥に鎮座していて、なんと建武中興の忠臣である北畠顕能を主祭神とした神社。北畠顕能は伊勢国司としてここに居城を構え、北朝軍に対抗したらしい。


【北畠神社】

こんなかんじ。
境内入口から拝殿を撮影。杉の巨木が美しかった(どうも写真ではうまく伝わらない)。



拝殿



境内にあった北畠顕能像


北畠家はもともと公家であったことから、北畠顕能も和歌を詠んだようだ。伊勢国司のときに詠んだものが新葉和歌集に入集されている。。

いかにして伊勢の浜荻ふく風の治まりにきと四方に知らせむ 北畠顕能(新葉和歌集)


北畠神社境内に歌碑




 





さて、境内には「北畠氏館跡庭園」という立派な庭園があり、国の史跡に指定されている。
武将らしい豪放な作風の庭園は、入園料300円。
300円を惜しんだというわけではないが、柴垣の外からの盗撮に成功した。





これは素晴らしい!
(生涯で再び行くことがあれば、入園料払って入ってみたい)




この庭園の歴史的な経緯はともかく、この庭園をめぐって歌が詠まれ、現在に伝わっているので紹介する。

絵にうつし石をつくりし海山を後の世までも目かれずや見む 細川高国


管領 細川高国の辞世の歌。細川高国はこの庭園の作庭者らしい。(1531年)




君まさでふりぬる池の心にも いいこをいでねむかしこふらん 本居宣長(菅笠日記)
 君がいらっしゃらないで、古くなった池は心にある言いたいことを
言わないとしても 恋しがってはいるでしょう(諏訪邦夫訳) 


本居宣長の先祖は北畠家の家臣だったらしい。



境内に上記2首の説明板










本居宣長は仲間との吉野の花見旅行の帰りに当地に立ち寄っている。
先祖を追想して次の歌を詠んだ。


下草の末葉もぬれて春雨に かれにしきみのめぐみをぞ思ふ 本居宣長(菅笠日記)
 春雨で下草の末葉もぬれていますが 昔々の先祖の恵みを思うことです
(諏訪邦夫訳)













今回びっくりしたのは、こんな奈良県との県境に近い
秘境のような山奥が三重県の津市であったことです。





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