すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


小浜宿(こはまじゅく)(兵庫県宝塚市)








Wikipedia「小浜宿」より






摂津名所図会 「小濱 亳摂寺 八本松」

早稲田大学図書館



★ 摂津名所図会ネタ



兵庫県宝塚市に小浜という宿場町があったとは全然知らなかった。
しかもそこは有馬街道、京伏見街道、西宮街道が交差する正に交通の要衝だったとのこと。



現在では宝塚駅周辺が一番賑わっているが、近世までは小浜がこの辺りの中心地だったようだ。平安時代には国府が置かれていたとか、戦国時代には浄土真宗の寺内町であったり、また、有馬温泉湯治の往来で著名人が逗留したり、それなりに歴史上に登場する。



近代になり、鉄道が通らなかったせいで寂れたのか。



小浜は浄土真宗の亳摂寺を中心にして栄えた。そして亳摂寺の境内には八本の松が名物として風趣を添えていた。



摂津名所図会によると、


八本松 
境内にあり。近世宝暦年中、風早中納言公雄卿当院へ内縁あるによつて、公卿十人の詠歌を勧進して贈りたまふ。
外題は転法輪三条右大臣季晴公筆。詠歌点ならびに松尽の巻の好み、冷泉大納言為村卿。



とあって、公家たち総勢11名が八本松を題詠として奉献された歌が記銘されている。


津の国小濱の寺に年ふかく生ひそふの蔭ぞ木高き 清水谷大納言宝栄卿
とく法の声をつたえて年へぬるが世高きてらぞ此寺 庭田前大納言重照卿
八本(やもと)たつ小浜の松のふか緑しらず幾世の春を経ぬらん 油小路中納言喬前卿
いく千歳栄を見せて八本たつ小濱の松や春を経ぬらん 西園寺中納言賞季卿
八本たつ松も千歳の蔭そへて小浜の春はいろを重ぬる 中御門前大納言家長卿
ゆく末を思ふも久し此の寺八本の松のいく千世のかげ 唐橋右大弁在家卿
千年をもここにへぬべし此寺八本の松の陰の木だかさ 藪佐少将保季卿
八本たつ蔭いく千歳色に見ん小浜のときはかきはに 豊岡治部少輔尚資卿
陰たかく猶生いしげれ庭のまつ八本に千世のいろをふかめて 清水谷右少将公美卿
かげ高き八本の松のいくとせか小浜の春に色をそふらん 園池右兵衛権佐実徳卿



箱の裏書に曰く、
摂州小浜毫摂寺、八根の古松の詠歌十首を
一巻と為し、善神院住空大徳に贈る者なり。

かきつめて八本の松のことの葉を伝へむすえも千歳万代(よろづよ) 風早中納言公雄卿


















■ 有馬街道を歩いたときに寄ってきた。


これは小浜宿の南門らしい




「摂津国 川辺郡 小浜宿」とある




亳摂寺の入り口




本堂




境内。見たところ、松は生えていなかった。残念。




境内にあった西洋風の建物。納骨堂らしい。




「西本願寺派 亳摂寺 小浜御坊」




寺内町であることはよく分かったが、宿場町の雰囲気はなかった。




これによると、もともと亳摂寺は現在の倍以上の敷地があったようだ。















八本の松も今となっては忘却の彼方に行ってしまったようだ






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